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「ここあっついねん。中は冷房きいてんやろ?」
「貴様……貴様、どこから入り込んだ!」
「どこて……。そこの庭の垣根の隙間から」
「鉄壁の警備システムに、そんな隙が!?」
あれほどの予算をつぎ込んだ警備システムに穴があっただと?
まさかそんな、ありえない。
しかし事実、ここに入り込んだ二ノ宮は、べたりと窓にへばりついてねだる。
「なあ、はよう。はよう開けてくれや」
「……」
──落ち着くんだ、私。
この男を相手に取り乱してはいけない。
それは奴の思う壺なのだ。
「……不法侵入で訴えるところだが、今日のところは見逃してやろう。
即刻、立ち去りたまえ」
今更に重々しく言ってみたが、効果は期待できない。
奴の面の皮は核シェルターなみに厚い。
「……藤堂君?……どうしたんじゃ?」
ふいに布団が持ち上がり、むくりと小柄な人影が起き上がった。
どうも騒ぎに気付いて市川老が目を覚ましてしまわれたようだ。
主の眠りを妨げてしまうとは、なんたる失態。
「申し訳御座いません、旦那様。二ノ宮の奴めが、不法侵入を……」
「あ、ニイッチャン、来たの。
いいんじゃよ、わしが呼んだんじゃ」
「……はい?」
「開けてー、はよ開けてー」
私が戸惑っている隙に、旦那様が窓を開けて二ノ宮を中に入れてしまわれた。
いったい、どういうことなのだろう。
「呼ばれたから来たのに、もう寝てるとかひどいんちゃうか、爺さん」
「すまんの。遅かったから、もう明日にするのかと思って、寝てしもうてな。
ほれ、わし、年なんで早寝じゃから」
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