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「ままー、このおはな、きれいだね。なんていうおはな?」
「アジサイ、よ」
「あじしゃい」
「あ、じ、さ、い」
「うん。ね、これ、もらったの?」
「そう、いただいたのよ」
「あのねー、みぃちゃんもねー、おはな、もらったの」
「みぃちゃん、ママね、ちょっと今から大事なご用があるから。お話は、あとにしてくれるかなあ」
「あのねー、たけひとくんがねー、くれたんだよ」
「みぃちゃん」
「でもねー、ないしょなの」
「ないしょ?」
「そう。ないしょだけど、けっこんするの」
「えっ、結婚?」
「そう。たけひとくんが、おおきくなったら、けっこんしようって。のんちゃんや、ほかのこには、ないしょだよ、って」
「・・・ああ、そうなの。よかったね」
「うん!」
「でも、ないしょだったんじゃないの? ママに言ってもよかったのかな?」
「あっ・・・うーんと、じゃあ・・・ままも、ないしょにしててくれる?」
「・・・わかった。じゃあ、みぃちゃんね、ママからも、おねがいがあるの。おはなを洗面台に持っていって、お部屋でちょっと遊んでてくれる?」
「うん! まま、ないしょだからねー」
自分の顔ほどもあるアジサイの花を持って、ちょこちょこと元気よく部屋を出ていく、小さな後ろ姿を見送る。
子供は、無邪気で、かわいい。
いきなり結婚の約束をしちゃうところも、秘密だよって言いながら、全部しゃべっちゃうところも。
大人になると、なかなか、そうは行かない。
「かわいいですね、お子さん。ミナちゃんでしたっけ? もうすぐ、五才になるそうで」
「・・・ええ。お花までいただいたのに、お待たせして、すみませんでした」
「いえいえ。かわいい盛りですよね、いいなあ。私も、」
「余計なやり取りは結構です」
「・・・」
「うちの主人のことで、お話があるということでしたよね?」
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