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部室に残された僕達は何時もの様に定位置に座って落ち着くが、僕だけは心に靄がかかった様にスッキリとしないでいた。
「連絡しなかったのは僕が悪かったから、いい加減機嫌直してくれないか?」
秋斗は困ったように僕の方顔を覗き込んで話しかけてくる。
「いや、別に良いんだよ。僕だってスマホが見られる状況でも無かったし、秋斗の経緯も聞かせてもらったし」
僕は不貞腐れた子供の様に、自分が何に対してこんな気持ちになっているのかも分からないまま秋斗から視線を逸らして話続ける。
「ただ。せっかく二人の部活なのになって思ってさ」
「なんだ。寂しかったのか」
「なにいってんだよ。そんなのじゃなくて」
「まあ、悪かったよ。今度からちゃんと連絡するから……って何だこれ」
「ああ、それは今日発売のジュースだよ。一緒に飲もうと思って買って来たんだった」
秋斗がニコニコしながら近づいてくる最中、少し遠くに置いてあった、二つのジュースを見つけて質問してくる。
「はいよ。一緒に飲むんだろ?」
「……飲む」
僕は秋斗が持ってきたジュースを受け取ると、もうそれはぬるくなっていて、美味しそうには決して見えなかったが、秋斗はそんな事お構いなしに蓋を開けてゴクゴクと飲み始める。
それに習うようにして僕も蓋を開けて飲むと、想像以上に甘くて、僕は急いでラベルを確認する。
「ゴッホゴッホなんだよこれ」
秋斗も僕と同じだったようで咳をしてから確認していた。
「練乳プリン味?」
僕がその表示を口に出して読むと、秋斗が僕の方をじっと見てくる。
「なんだよこれ」
「いや、新商品って聞いたから買ってみたんだけど、面白そうじゃない?」
僕は秋斗から向けられる冷たい視線から目を逸らして、右上を見ながら冗談交じりに弁解をする。
「……あはは、なんだよこれ甘すぎて喉乾くって」
秋斗はそんな僕とは裏腹に、ジュースを右手に持ったまま少しだけ涙を流す程笑始める。
「ふっ。ごめんって確かに喉乾くや」
そんな秋斗の様子に、僕までつられて笑ってしまい。さっきまでかかっていた霧がスッと晴れていくのがわかる。
「帰ろうか。自動販売機寄りながらさ」
僕が笑っている間に、秋斗落ち着いていたのか、僕に提案をしてくる。
「うん。帰ろ」
僕もそれに沿うようにして、僕達の部室の電気を消しに向かった。
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