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「「落とし物探し?」」
僕達は彼女から出た言葉に、肩を落としつつ話を聞いた。
「お願いします。彼氏からもらった大切なストラップなんです」
その彼女の力強い言葉に僕達は依頼を引き受け、運動部の掛け声が響き渡る放課後の廊下こうして歩き回っていた。
「秋斗、来る依頼来る依頼、落とし物だったり先生からの頼み事だったり、もうそろそろ雑用部にでも改名した方が良いんじゃないかな?」
「縁起でもないこと言うなよな。あ、あったあれじゃないか?」
秋斗が指を差した先に落ちていたストラップと、彼女からもらった写真を見比べると、間違いなく落とし物だった。
「はぁ、やっぱり推理するまでもねーじゃん」
「まあまあ。これで依頼達成。部室に帰るぞ」
「あいあい」
僕達探偵部の活動は、今日もまた推理をすることも無く終わっていく。
次の日。僕達が部室のドアを開けると、そこには昨日相談に来た女生徒の姿があった。
「どうしたの?また落とし物でもしたの?」
僕がそんな面白くも無い冗談を言って彼女に近づくと、彼女は泣きそうな顔になって話始める。
「う、実は彼氏が隠し事してるみたいで…」
その彼女の声に、秋斗も深刻に思ったようで、教室のドアを閉めてから僕達の方へと近づいてくる。
「あれま…君みたいな美しい女性に涙なんて似合わないよ」
僕が紳士ぶってそう言うと、何故だか涙も無く不思議そうな顔で返されてしまった。
「今度は浮気調査でよろしいですか?」
秋斗は僕の肩を叩きながら、僕を押しのけるようにしてそう告げた。こんにゃろー
「はい、お願いします。彼は1年2組の鈴木直人って言います」
「あ、鈴木…」
僕は知った名前が出てきて、気まずそうに繰り返してしまう。
すると僕の異変に気が付いたのか、秋斗は僕の顔を見て質問をしてくる。
「なんだ。空斗の知り合いか?」
「いや、まあね」
僕は嫌な予感を感じて、はぐらかす様に女生徒の向かいに座って話を戻す。
「隠し事って言っても浮気と決まった訳じゃないじゃん?どうして浮気って?」
「彼、この頃私の友達と仲良さそうにしてて、この前なんて、その子と待ち合わせのメールをしているのが見えたんですよ!」
彼女のその迫真な様子に、僕は気まずくなって秋斗の方を一瞥すると、秋斗も僕を見ていたようで目があってしまい、僕は咄嗟に目を逸らす。
少しの間後頭部に目線を感じていると、秋斗が外行きの声を出して彼女に話しかける。
「とりあえず承りました。こちらでも調査してみるので、貴女は何時も通り過ごしていてください」
「は、はい。それじゃあお願いしますよ!」
秋斗の様子に彼女は少したじろぎ、僕の方を見て力強くそう言うと、椅子から勢いよく立ち上がって、教室から出て行った。
彼女が部室を出て行くのを無言で見送ると、教室の中には僕達二人だけが残り。少しの間無音の空間が続いた。
「で、空斗。お前は何を隠しているんだ?」
その無音を壊したのは、秋斗から告げられたまっすぐな言葉だった。
「いや、まあな」
僕がそう言ってはぐらかそうとすると、秋斗は僕の顔をじっと睨みつけてくる…怖い怖い
「彼女な、もうすぐ誕生日なんだよ」
「なるほど、それが隠し事の内容なのは納得した。だが何故空斗が知っていて、それを僕にまで隠そうとしたんだ?」
やはりそこが気に障ったのか、秋斗は機嫌が悪そうなまま質問を立て続けに投げてくる。
「う…あのな。鈴木とは顔見知りでさ、彼女が誕生日だからプレゼントをあげたいって相談されたんだよ。だけどよく分かんなかったから、彼女の友達にでも聞けば。って感じで…」
「はあ、つまりは?」
「今回の案件は僕の責任でした。誠に申し訳ありませんでした!」
僕が大きな声を出しながら下げた頭の上で、秋斗の吐いたため息が部室内の空気を常温に戻してくれたのを感じた。
後日。彼女の誕生日に少人数で開かれたサプライズパーティーにて、鈴木の説明の元、浮気は彼女の誤解だったという形で解決したそうだ。
おしまい。
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