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二件目
僕達の部室は普段物置としてしか使われていない旧校舎にある、探偵部創立時に秋斗の
「プライベートな相談などもありますので、人通りの少ない旧校舎の使用許可をお願いします」
という言い分と、顧問の計らいもあって、こうして僕達だけのプライベート空間を手に入れたのである。
「だからと言って私物化しすぎじゃないか?」
僕が部室のロッカーに丁寧に並べられた大量の本へと目を向けながら言うと、その中から一冊の本を取り出したばかりの秋斗が早口で言い訳を並べる。
「そんなことない。これは探偵としての知見を広めると…って空斗だってここの本読んでるだろ」
「いや、やっぱり秋斗の趣味は良いな」
「まあ、な」
僕が適当に笑顔で誤魔化そうとするとよほど嬉しかったのか、秋斗にしてはごまかされてくれる。
そんな風にして僕達の放課後は過ぎていく。
先程言った通り、もちろん僕達の部活にも顧問の先生がいる。
「山川先生―プリント運びって探偵に頼むこと?」
僕はわざとらしく不満たらたらに言葉を紡ぐ
「探偵に頼むことでは無いかもな。でも暇な奴等に頼むことではあるだろ?」
僕が山川先生と呼んだ成人男性は僕達探偵部の顧問の先生である。だから僕達が暇なことも筒抜けなのである。
「先生。僕達は暇なわけじゃなくて、依頼人が何時来てもいいようにって時間を空けてるんだって」
「まあ依頼人なんて滅多に来ないけどな」
僕が屁理屈を言うと、よほどこのプリント運びと言う雑用が嫌だったのか、テンションの低い秋斗がボソッと言葉を零す。
僕達のそんな様子を見て、満足そうに笑顔を浮かべながら先生は楽しそうに話を続ける。
「依頼人が来てないならたまには良いだろ。あーならこれ運んでくれたら依頼紹介してやるよ」
「マジ⁉ならパパっと終わらせようぜ。な、秋斗」
先生から出た言葉に僕はテンションが上がってしまい、大きな声を出してしまう。そんな僕の事を見て先生と秋斗は苦笑いで返してきたが、そんなことよりも僕の頭の中は依頼の事でいっぱいになっていた。
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