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三件目
僕達の部室がある旧校舎の廊下は、人通りも少なく日当たりも悪いといった、夏だというのに気持ちのいい風が通る、とっておきの場所である。
僕はそんな廊下を走って、部室のドアを思いっきり開けて、中で待っているはずの幼馴染に声をかける。
「なあなあ、秋斗!今日から自動販売機に新商品が」
僕は言いかけた言葉を途中で止めて、その教室の中を見回し、話しかけたはずの幼馴染が居ないことを認識する。
「ちぇ、いねーのかよ。せっかく秋斗の分も買って来たのにな」
そう独り言を呟くと、僕はノシノシとゆっくりと歩いて、いつも座る席に缶ジュースを二つ置いて、椅子に座って秋斗が来るのを待つことにした。
しばらくすると、廊下かこちらに近づいてくる足音が聞こえて、僕はパッとドアの方向に目を向ける。
あいつがこのジュースを見たらどんな反応をするだろう。そんな期待に添うようにして、徐々に足音は近づいてきて、その足音が止まると同時に、部室のドアが音と立てて開く。
「失礼します。ここが何でもクラブでいいのかな?」
そう言って入ってきた髪の長い女生徒の姿に、僕は少しの虚しさと寂しさ。それから依頼が来たという高揚感を覚えて立ち上がって返事をする。
「ちょっと違うんですけど、多分そのクラブですよ」
「多分?」
上履きの色からして、上級生だと思われるその女生徒に、敬語を使って冗談交じりに返事をすると、先輩は少し笑いながら首をかしげてしまう。
「あ、いえ。ようこそ探偵部へ」
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