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「ねえ、そこの君ちょっと良いかな?」
僕が旧校舎に向かって歩いていると、急に後ろから女性に呼び止められる。
「はい。僕ですか?」
僕が、その声の方に振り替えると、そこには何度も見た事のある先輩が居て、僕の顔をじっと見つめていた。
「そう君。確か探偵部の秋斗君だったよね。ちょっと相談に乗ってもらえない?」
「分かりました。それじゃあ部室に入ってから聞きますね」
初対面の先輩に名前で呼ばれる事に違和感を覚えながら、僕が部室に入ろうと足を進めようとすると、その先輩は困ったような声を出して僕を止める。
「あーごめんね。今は入りづらいな。ジュースでも飲んで話そうよ。先輩がおごってあげるからさ。」
そう言うと、初対面の先輩に腕を引かれて自動販売機の方へと引っ張られていく。
先輩に連れられるがままに自動販売機の横のベンチまで来ると、僕は熱さのせいもあってか、そのままベンチに座り込む。
「もう。情けないわね。はいこれ飲めそう?」
そう言うと、先輩は僕に一本のジュースを渡してくれる。
「ありがとうございます」
「ううん。良いのよ。私が無理言って連れて来たんだもの、ゆっくりしていきましょ」
僕がお礼を言ってからジュースを飲むと、先輩は満足そうに笑ってから僕のすぐ横に腰掛ける。
そうして座った先輩の位置が思ったより近かったので、少しドキっとした自分を隠すために話を始める。
「それで生徒会長さんがどういったご用件でしょう」
「流石は秋斗君ね。知ってくれていて嬉しいけど、そんな風に継承で呼ばれると距離を感じてしまうわね」
「……すいません」
「ちょっとした冗談よ」
僕が生徒会長と呼んだ人は、ニコニコと笑った後に、スッと真剣な眼差しになって話を始める。
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