大切なものを失くしても……

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 カマキリって、越冬するんですか?   もう十二月なのに……  不吉な言葉は、まるでこれから先のことを予言していたようだ。  レドが起きて窓を開けると、ベランダに霜が降りていた。  真っ白! フワフワの雪じゃなく、冷たさを圧縮したみたいな氷ついた世界。  レドは寒さも顧みず、窓を全開にして壁を見た。  いない。  床は? こんなにあたり一面白くっちゃ、例え落ち葉と洗濯ばさみの両方が落ちていたって、区別がつかないかも。  四つん這いになって、テラスの床に視線を彷徨わせると、わずかに盛り上がった白い霜がある。レドはハンガーで霜をかき分け、中身を傷つけないようにすくい上げた。  緑の身体は生気を失い、ミルクティーのような薄茶色に変っている部分があった。 🐰「カマちゃん。しっかりして。待っててね。あったかくしてあげる」  スマホで検索すると、外にいたカマキリには寄生虫がいるかもしれないとのこと。それでも家の中に入れて温めてやりたい。  小さな箱を用意して、ビニールの手袋をはめ、カマちゃんを摘まみ上げる。ぐったりしていたカマちゃんが、レドを見つめて片鎌を上げた。 🐰「そんなに弱っているのに、やぁ、じゃないよ」  レドの声は掠れてしまい、鼻をすする音に代わった。      
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