274人が本棚に入れています
本棚に追加
カマキリって、越冬するんですか?
もう十二月なのに……
不吉な言葉は、まるでこれから先のことを予言していたようだ。
レドが起きて窓を開けると、ベランダに霜が降りていた。
真っ白! フワフワの雪じゃなく、冷たさを圧縮したみたいな氷ついた世界。
レドは寒さも顧みず、窓を全開にして壁を見た。
いない。
床は? こんなにあたり一面白くっちゃ、例え落ち葉と洗濯ばさみの両方が落ちていたって、区別がつかないかも。
四つん這いになって、テラスの床に視線を彷徨わせると、わずかに盛り上がった白い霜がある。レドはハンガーで霜をかき分け、中身を傷つけないようにすくい上げた。
緑の身体は生気を失い、ミルクティーのような薄茶色に変っている部分があった。
🐰「カマちゃん。しっかりして。待っててね。あったかくしてあげる」
スマホで検索すると、外にいたカマキリには寄生虫がいるかもしれないとのこと。それでも家の中に入れて温めてやりたい。
小さな箱を用意して、ビニールの手袋をはめ、カマちゃんを摘まみ上げる。ぐったりしていたカマちゃんが、レドを見つめて片鎌を上げた。
🐰「そんなに弱っているのに、やぁ、じゃないよ」
レドの声は掠れてしまい、鼻をすする音に代わった。
最初のコメントを投稿しよう!