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レドはカマちゃんの亡骸をティッシュとラップで包み、大きな公園に行った。
🐰「寒かったね。カマちゃん。暖かいところに埋めてあげるからね」
冬でも日が当たり、歩行者に踏まれなさそうな桜の木の根元をスコップで掘る。さよなら、カマちゃん。静かに亡骸を横たえて土をかぶせていく。
きっと春には薄桃色の花びらが、カマちゃんの上に降り積もるだろう。
レドはとぼとぼ家に帰った。
二階に上がってベランダに出る。いつもカマちゃんがとまっていた壁を力なく見つめた。ここでこうして(´・ω・`)ノ ヤァ! といつも手と鎌をあげて挨拶をしあった。でも今は、ただの壁。
ふと上げた手の指の間から、見慣れないものが見えた気がした。
柄の長いほうきを横にずらすと、三葉虫のような茶色の物体がある。
🐰「なんだこれ?」
スマホで検索してみると、な、な、なんと、カマキリの卵だった。
泣いていいのか笑っていいのか、レドの顔はくしゃくしゃになった。
命も希望も、こうして次世代へと受け継がれていく。
春になれば、沢山の小さなカマキリの赤ちゃんが、片方の鎌を上げて、ヤァと挨拶をしてくれるに違いない。
終わり
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