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プロローグ
知り合ったきっかけは大学のサークルで、他校のサークルとの交流と情報交換と理由付けられた飲み会だった。
美術館や博物館など、歴史作品や有名作品を見て話し合いをして知識を深めていこうという、絵画、美術、歴史観賞サークルに入っていた。
昔から絵を描くことが好きで、だからといって才能が付いて来るでもなく突然開花するでもなく、画家などと言う一握りの道は諦めて、芸大と言いたいが無理もいいとこで普通に文学部の大学に入学して、見るのは好きだし知識を知る事も楽しいと思えて今のサークルに入った。
彼は有名大学の同級生で、普段ならお知り合いになどなれない学校だったけど、同じく美術鑑賞クラブという彼の大学のサークルの人はみんな親切で気さくで話し易かった。
部長同士、バイト先が同じで実現した飲み会だった。
「千葉さん。飲んでる?あ〜飲み過ぎ?」
私の前に並んだグラスを見て、持って来たお酒を香河が引っ込めた。
「頂きます。お酒強いんです!」
笑顔を向けて答えた。
「マジ?無理してない?」
「平気です。」
お酒を渡しながら店員にウーロン茶を注文して、これで終わりにしてね、と気遣いを見せてくれた。
一段高くなった座敷の扉のない居酒屋で、畳席は貸切状態でみんなが好きに移動する中、隣に腰を下ろすと話しかけて来た。
「千葉さん、て出身千葉とかいう?」
「よく聞かれますけど、残念ながら違います。それを言うなら香川さんは香川ですか?」
笑いながら聞く。
「ぶー!字が違うんだよな。」
と、割り箸が入っていた袋にボールペンをポケットから出して、「香河」と書いて見せてくれた。
「こうが、とか間違われる。香河陣、ジンって呼ばれてる。宜しくね?千葉……?」
フルネームを割り箸の袋に書かれた。
笑いながら自分の名前を答えて、説明をした。
「三月です。三月と書いてみづき。」
「三月ちゃん、よろしくね?」
「宜しくお願いします。」
明るい人だなと、一流大学の経済学部、優秀なはずなのに気取らない良い人だと思った。
それが第一印象だった。
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