菊田、ガチ恋してるってよ

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裏門に寄り掛かり、こちらに目を向けている。マスクは顎にずらされ、今は気怠い無表情がはっきり見える。ポケットに突っ込んでいない右手の指の間には煙の上がる細い筒状のもの。 「煙草、吸うんだ」 飴玉の欠片を隅に押しやって発した言葉は我ながら間抜けだ。怪訝そうな顔をした高村は「まあな」と肯定し煙草に口を付けた。 「何」 煙を吐き出した彼に問われ、自分が一挙一動を凝視していた事に気づく。慌ててかぶりを振った。煙草を挟んだ唇を見てました、なんて言えるわけがない。 「イメージなかったから、びっくりしただけ」 「煙草の?」 「うん。めちゃくちゃ受動喫煙気にしそう」 「何だそりゃ」 ふっと和らいだ目元が表情を彩る。 これだ。この人、躱す癖に諦めさせる気がない。本人は意図していないから余計に質が悪い。 「俺、本気だかんね」 「あん?」 「首洗って待っとけよたかむー!」 「討ち取る気かよおい」 ツッコミながらも“何に”本気かという事には触れてこない。取り合う気がないと解釈するのが妥当だろうが、生憎菊田は逞しさが売りだ。 ──拒絶しないって事は、好きでいていいって事だよな。 先程の煩悶はどこへやら。にやにやと口元が弛む。 「ほれ、行った行った。受動喫煙は有害だぞ」 「たかむーもほどほどにね」 「はいはい」 しっしっと手を振り追い立てられるが、菊田の足取りは軽かった。 口の中の小さくなった飴玉の欠片をゆっくり舐める。いいぞ、俺。ソーダが弾けるような気がした。 to be continued…
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