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サプライズ
「ちょっと待って」
ナナミの友だちの留依(るい)が立っていこうとするまさやんを引き留める。
「何だ?」
「もう、鈍いわね」
留依がまさやんの腕をとって引き戻す。
「今度こそか」
「ちょっと黙っててよ」
小声で囁きあうのが聞こえるが何のことをいっているのかまではわからない。
-何か、まだ隠し事があるのか?
女子たちがナナミの前に立って何か「頑張れ」「ここまできた」「もう後がない」など言っているのが聞こえる。
ー何か隠しているらしい?
何を隠しているのか考えている間に、ナナミがオレの前に立った。
「あのね。実はね……」
まさかと期待する自分を戒める。
今までの3回、何もなかったんだ。
この先も仲のいい幼なじみでいくと決めている。
そう思うがナナミの首筋に一筋流れる髪に、恥ずかしそうに俯く横顔に、惹かれていく自分を否定できない。
ナナミはやっと決心したのか、オレをまっすぐに見て
「ずっと、好きだったの。恋人になって」
と言うと、頭を下げて手を差し出す。
今日一番の驚きがあった。
隠し事がヘタなナナミがずっと隠していた本当の気持ちを今、言われて初めて知った。
すごく嬉しい隠し事だった。
ナナミの手を取ると
「ああ。オレも同じだよ」
と自分の隠していた気持ちを伝えた。
ナナミの上げた顔を見ると花が咲いたように感じた。
周りで見ていた同級生が「ヒューヒュー」と言って盛り上がる。
二人で照れて顔を見合わせる。
「ねえ。みんなでカラオケ行こう」
同級生たちが「オー」と言って部屋を出て行く。
「おいてかないで」
ナナミが後について行く。
俺としっかりと手をつないで。
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