始まり

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始まり

「ねぇねぇ。蓮。今度の日曜日、ヒマ?」  高校の廊下を歩きながら幼なじみの月島 ナナミがオレの顔をのぞき込みながら聞いてきた。  ナナミの不安そうなでも期待のほうが大きい目をみて 「さあな」と窓の方を見ながら答えた。 「ヒマってことね。よかった」  ナナミは腕を前に伸ばして伸びをするとニコニコしながら歩いている。 笑顔のナナミを見ながら少し意地悪をしたくなった。 「やっぱ、まさやんと出かけるわ」  ナナミが慌てた顔をしてのぞき込む。 「ええー! そんなの聞いてない」 「言ってないからな」  予想通りの反応に楽しくなって「そうだ。他のやつも誘おうかな」と言うと「そんなの絶対ダメに決まっているじゃん」と必死に否定してくる。 「何で、オレの予定を決めるんだよ」 「それは……その……」  口ごもって視線を下に向けて左右に動かすナナミに「寝てるよ」と一言。  パッと顔を上げて見せた笑顔に一瞬、眩しさを感じた。 「じゃあ、何の予定もないってことでいいのね」 「………ああそうだよ」  ため息と同時に答えるとナナミは嬉しそうに「じゃあね」と言って自分の教室は入って行く。
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