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プロローグ
選ばれた者と選ばれなかった者。
無力さの後に知ったのは、絶望と後悔だった。
力無き者が思いの果てに、奇跡が起きると信じて、出せるだけの力を振り絞っても。
……無力は無力だ。
奇跡など起こるはずも、望んだ願いも叶うはずもなく、滅び散る。
無惨にも地に転がる無数の人の体が、次は僕の終わりだと告げているようだった。
「……どうして……こんな事に……」
立ち上がる力さえ、残ってなどいない。
あと一歩。もう一歩。
踏み込む足が速かったなら。
あと少し。もう少し。
振り下ろす手が速かったなら。
こんな世界を見る事もなかったのだろう……なんて嘘だ。
自分の力量を知らない者は、相手の力量も知る事は出来ない。
知らないからこそ無謀にも立ち向かう愚かな行動は、自分の力量の過信と、自分の中に眠る奇跡を信じたせいだ。
目覚めろ、目覚めろ、目覚めろっ……!
目覚めて超えろ……!
そんな思いなど、どんなに叫んでも届かない思いだった。
例え力があったとしても、敵わなければ苦痛に耐える時間が長くなるだけだ。
「……なんだ……これもハズレか」
……ハズレ……。
つまらなそうに呟く、低い声が降り落ちる。
「残念だな」
続けてそう言葉を吐く声の主は、地にうつぶせに倒れたままの僕の頭を踏みつけた。
……声も出なかった。
痛い……とか。悔しいとか、辛いとか、苦しいとか。そんな感情を掴む手も動くはずもなく、抱えた絶望も後悔も崩れ去った。
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