沈む日

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 シェルターから外に出ると、何もかもが崩壊していた。  逃げ惑った人たちの死骸がたくさんころがっている。あちこちに。父さんはどこで死んだのか分からなかった。  ひとりぼっちだったのだろうか、誰かといたのだろうか。分からない。  残された人たちが逃げようとまとめた荷物の跡を見ていると、酸っぱいものがこみ上げてくる。吐きそうだ。  俺はこの人たちを踏みつけにして生き延びた。だけど、吐くようなものはない。そんな場合じゃないんだ、そんな余裕はない。悠長なことはやってられない。  とにかくまずみんなで遺体を供養して、そうするともう俺たちは先に進まないといけなくなった。  生き延びたけど、その先は誰も保障をしてくれない。政府のお偉いさんとかは当然生き延びてるけど、全然元通りになんかはならない。  亡くなった人たちの家に残された道具(もの)をめぐって、略奪が繰り広げられた。
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