沈む日

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 陽一がいつか言っていた。  ノアの方舟だって、水がひいて陸地を見つけるのに一五〇日かかったんだぜ、と。大雨の後で一五〇日だ。隕石が降れば二年なんて短すぎる、と。  さすがに、情報屋みたいなことをしてるだけあって、変な知識が多いヤツだ。  陽一がインパクト前に何をやってたのかはしらないけど、俺と大して年は変わらないように思う。話しているうちに気があって、いつの間にかヤツは俺を友達だと言うようになった。  そもそも人間は少ないから、それは俺もすごく嬉しい。  飄々としたヤツだが、陽一も陽一なりに、寂しいのかもしれない。家族の話など聞いたこともないし。  微かなお茶の香りを味わって、ゆっくりと一口飲んでから、マグを離す。 「何か仕事ある?」 「あるぜー。お前みたいな、若くて力のある男に出来る仕事はそこそこあるぜ。ラッキーだったな」  そう生まれついて。  ハイテクは死んだ。必要なのは、這いずってでも生き延びる意志、そしてそれを形にする力だ。  本当に、俺はラッキーだった。
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