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沈む日
「もう何回目だ、この葉っぱ」
「五回目」
「色も出てねえよ」
「味もしないかもな」
でも、贅沢品だぜ、味わえよ。
笑いながら差し出されたスチールのマグを受け取る。掌にじんわりと熱が広がった。
案の定、マグの中の湯は大した色もついていなくて、味も予想がついた。
「珈琲がいい」
「手に入ればなそのうちな」
「お湯で薄めたのじゃなくて、一杯目の濃いやつがいい」
「お前どうせ、牛乳と砂糖がないと飲めないだろ。そこまで手に入らないよ。出がらしでも飲めるだけありがたく思え」
友達だから飲ませてやるんだぞと、陽一は軽く笑う。
こんな世界なのに、こいつの笑いはいつも軽くて、時々腹が立つし、時々気が軽くなる。
大きな隕石が降ってくると恐慌が世界中を満たしていたのは、三年前のことだ。その一年後、本当に隕石が落ちてきた。
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