喫茶店オフィス、準備中

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喫茶店オフィス、準備中

時刻、午前2時。課題、一万字レポート。提出期限、3日後。進捗、 「ニーチェの『神は死んだ』という思想について」 21文字。タイトルのみ。 流石にこの時点でも分かる、私が哲学科に向いていないという圧倒的事実。そもそも別に哲学に興味があった訳でもない私がこの科を選んだのは単純に倍率が低く入りやすかったからというだけに他ならない。 名前のせいで学生時代は周囲からネタにされること多数。だから大学こそは、と優秀だった兄と同じ大学に行けるよう必死(私比)で受験戦争を乗り越え生き延びやっと掴んだ"安住の地"へのパスポート。流石に大学生になってまでネタにするやつはそう居ないだろうしどこでもいいよね、なんて軽い気持ちで適当に選んだ専攻科目。しかしこんなにも向いていないとは想定外だった。しかも3年生になって早々の講義でこれである。本当にこんな調子で大丈夫なのか我が事ながら最早他人事のような心境だ。 だがどうしたって浮かばないものは仕方がない。もういっそのこと気分転換でもしてみるか?最近は本屋もあんまり行ってないし後は……"喫茶店"、とか。 いずれにしても早く寝よう……なんて先行き不透明なままの私の未来はきっと、もう決まっていたのかも知れない。運命は"しらぬま"に、近くを漂っている。それは例えば紙とインクの混じった匂いのように、あるいは淹れたてのコーヒーの薫りのように。
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