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卒業アルバムの最後にある、友達や先生からのメッセージを書くための空白のページ。恭人のそれには、黒く太いマジックで大量の罵詈雑言が書き刻まれていた。ウザイ、死ね、消えろ……。ここには到底書けない下劣な言葉まである。筆跡を見るに複数の人物が別々に書いたように思えた。小学時代にあれだけ僕をいじめていた恭人は、中学生になって逆にみんなからいじめられていたのだ。
「……琴?」
その時だ。蛍光灯が一度フラッシュのように消えた。低く掠れた声が続ける。
「何してるんだ?」
帰ってきた恭人が僕を見ていた。瞳の奥はかき乱されたかのように黒く淀み、それに対して眼光はただ一点を見ている。僕の手元にあるいじめの忌まわしい証、その一点を。その時、僕の中にあった煮えたぎった血液が恭人との関係を終わらせる一言を喋らせる。
「あんた、いじめらてたんだ。ださ」
その瞬間、何かが切れたように恭人は僕をベッドに押し倒し、馬乗りになった。いよいよだ。恭人はまるで獣のように僕の衣服を脱がし、その乱暴な所作のせいで彼の腕や手のひらが僕の胸や腹に触れる。青白い蛍光灯の光が蜃気楼みたいに左右に揺れて広がっていく。そうして恭人は僕の下半身に手を伸ばし、そしてやはり気づいたように動きを止めた。
「琴、お前?」
その時の困惑したような悲しみのような恭人の顔が面白くて、僕は思わず笑みを浮かべた。
「ふっ、ふふふっ。ほんと、馬鹿なやつ」
「嘘だろ。おい。じゃあお前はなんで俺と」
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