不始末

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 僕のはじめての彼氏、汐留恭人とは、あの喫煙所で初めて会ったわけではない。僕と彼は、すでに小学校時代に会っていた。恭人と僕は2年間、クラスメイトとして同じ黒板に向っていのだ。僕はその頃、内気な性格でクラスのみんなからよくからかわれていた。勉強も運動もできない、体が小さい根暗な少年だった。  そんな僕へのクラスの反応がからかいからいじめに変わったのは小4の時、恭人が僕の前に現れてからだ。小学時代の彼は、今とは違った横暴な性格で知られていて、ゲームソフトを借りパクしたり、宿題を人にやらせたり、やんちゃな子たちを舎弟のように従えて子分のように使っていた。今から思えばかわいいものだが、小学生の僕にとってそれは恐怖の対象だった。さらに恭人は自分に気に食わないことがあると、子分たちを呼び出して八つ当たりで暴力を加えた。長い手足と一回り大きな彼の体格に、小さな体の生徒たちはただ怯えるしかなかった。  恭人が僕を見つけた時の目を、僕は忘れることができない。この世の悪をすべて吸い込んだような瞳で、白目は細長く伸びていた。誰よりも大人しく弱気な僕のことを格好のターゲットだと思ったのだろう。小さくほくそ笑んで、はじめは「いじり」から始まった。 「おっせーな。はやくしろよ」  恭人が僕の頭に拳をぐりぐりと押し付けながら言った。給食をなかなか食べ終えない僕を、恭人と取り巻きの何人かが囲んでいた。
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