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水魔法[Leviatano]
アテナが水魔法の鞭で蜘蛛型バグの脚をまとめて縛ろうとするが、バグはアテナの鞭を右に左にと素早く避ける。
「速すぎる!捕まえられない!!」
…どうする…このままじゃ他の誰かが倒しにくるかもしれない…。
倒されたらオリビアを助けられないかもしれない。
時間はかけてられない。
でも俺の魔法じゃオリビアを傷つけるかもしれない。
…直接当てないように、できるだろうか。
「…いや、それでいいからそのまま攻めて!ルキウス、網の準備を!」
火炎魔法[ファイアートラップ]
俺は地面に向かって魔法を放つ。
大事なのはタイミングと着地点の予測…。
「そこだ!!」
アテナの鞭を避けたバグが、脚を着いた所を狙って魔法を発動させる。
地面の中でトラップを爆発させ、バグの脚を浮き上がらせてバランスを崩す。
「ルキウス!網を!!」
雷魔法[藤黄の網]
網状の雷魔法がバグにまとわりつき、麻痺させる。
そして動きが鈍った所で、アテナの鞭が脚をまとめて縛り上げる。
「捕まえた…!」
バグは脚を左右で一つずつにまとめられ、立てずにもがいている。
「オリビア!オリビア返事して!!」
バグの体に向かってアテナが呼び掛ける。
きっとこの中にオリビアはいるはずだ。
だが返事はない。
もぞもぞとバグが動いているだけだ。
「オリビア、一緒に行こうって言ってたじゃないか…。」
「オリビア…。」
俺達もオリビアの名前を呼ぶ。
何よりもオリビアが戻るのを切望しているのはアテナだった。
「オリビア…私、オリビアのことお姉ちゃんみたいって思ったんだよ…。何かすごく懐かしい感じがして安心したの…。きっと前世とかもっとその前とか、遠いところで姉妹だったって信じてるくらい。…戻ってきてよ。…もう誰も置いていかないでよ…」
アテナの頬を涙がつたう。
オリビアと出会ってからたった1日、それでも俺達にとってオリビアは大事な存在になっていた。
「お願いオリビ」
アテナの叫びを掻き消すようにバチンッと弾ける音がした。
バグが脚の束縛を引きちぎったのだ。
脚を振り上げ、一番近くに居たアテナへ向かって振り下ろそうとしている。
「アテナっ!!」
その時だった。
修復魔法[リペア]
後ろから白い球体状の魔法が飛んできて、バグに当たる。
当たった所が丸く消えてなくなっている。
「サン!待って![リペア]を使っちゃだめだ!!」
白い球体状の魔法はサンの[リペア]だ。
だが[リペア]ではオリビアごと消えてしまうかもしれない。
バグは顔面の辺りを失い、のけ反ったもののまた攻撃を仕掛けようとしてくる。
俺はアテナを連れてその場を回避する。が、
修復魔法[リペア・連]
サンは[リペア]をマシンガンの如くバグに撃ち込んだ。
「やめろ!サン!サン!!」
ルキウスがサンの前に立ちはだかって止める。
しかしバグはもう蜂の巣状態だった。
「…そんな…。…オリビア…」
そしてハラハラと細かく崩れて風に流れて行く。
建物の影から風船を持ったさっきのピエロや、さっき逃げて行った人達がこちらをうかがっていた。
夕焼け色に染まる広場に、俺やアテナは膝をつき、ルキウスとサンは立ち尽くしていた。
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