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眠れない。眠れるはずがない。
あの後無言になってしまい、宿の方から食堂を閉めると言われて部屋に行った。
みんな口数も少なく休む準備をしてベットに入ったはいいものの、目を閉じるとあの光景が浮かび、眠ることができない。
俺はそっと外に出た。
月明かりが眩しいくらいだった。
これだけ明るいのに、星も見える。
ふらりふらりと街を歩く。
この辺りには夜に営業している店はない。
そのおかげで人もいなくて静かだった。
今、誰にも会わなくていいのはありがたい。
着いたのは中央噴水広場。
オリビアの姿を最後に見たあの場所だ。
ベンチに腰掛け、ぼんやりと空を見上げる。
どれ程そうしていたのかわからない。
ほんの少しだったかもしれないし、すごく長い時間だったかもしれない。
「………レオ?」
俺を呼ぶ声がして驚くと、アテナがそこにいた。
「どうした?なんでここに?」
話を聞くとどうやらアテナも眠れないようだ。
ベンチに2人で腰掛け、ポツリポツリと会話をする。
「…スィフル村のみんな、どうしてるかな。」
「…心配してるとおもうよ。特にアテナとサン。」
「ちゃんとレオとルキウスのことも心配してるはずよ。」
「………ねえ、アテナ。何で反対してたのについてきたの?」
「…。…レオとルキウスが行っちゃったら[リペア]が使えないの私だけ。…私だけ、1人。…置いていかれたくなかったの。」
「1人じゃないだろ?[リペア]が使えるかどうか関係なく家族だっているだろ?」
「………違うよ。レオとルキウスは特別なの。………オリビアも私の特別になると思ったのに…。オリビアも一緒に行けると思ったのに…!」
アテナはオリビアに貰ったペンダントを握りしめながら言った。
オリビアの話になると俺は何も言葉を出せなかった。
「レオ…ねえ、オリビアはバグになったの?それなら今まで倒してきたバグは人間なの?」
アテナから、コップの水が溢れるように涙と疑問が溢れだした。
「…。わからない。………でも今まで、誰もいない所からバグが出てきたことは何度もあった。もし、もしもバグの正体が人間なら、今までバグになってしまった瞬間を見なかったのはおかしい。…はずだ。」
こんなことを言ったが自信がない。
それに引っ掛かっていることはまだある。
「でも…人型バグは何かの正体を教えようとしてた…。それを追っかけて来た先でこんなことが起きて…正直俺もわからない。わからないよ。」
信じたくない可能性とそれを後押しするかのようなあの人型バグの言葉。
俺は目線を落として首を降る。
「もし、今まで倒してきたバグの正体が人だったらどうする…?」
アテナの問いに、俺は答えられない。
今まで、バグだから倒すべき存在だからと思っていたものが実は人間でした、なんて言われたら罪悪感や後味の悪さを感じずにはいられない。
「…アテナは?どう思う?」
「私は…バグが誰かを傷付けるなら倒すべきだと思う。でも…オリビアのことは戻せるなら戻したかった…。」
少し無言の時が流れる。
ふと視界の端に動くものを捉えた。
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