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『わか…ないなら 知ればいい。そ…が準備のうちの一つとなる。』
顔をあげるとそこにはあの人型バグがいた。
前のように妙な音がしない。
それに言葉も前よりよく聞き取れるし、姿も前より詳細にわかる。
身長は俺より少し高い。ルキウスやサンと同じくらいだろう。
バグなのでシルエットしかわからないが、体格からして男だろう。
人型バグは向きを変えると歩きだした。
「…待てっ」
どこからともなく突然現れたことに驚きつつ、人型バグを追う。
人型バグは時折フッと消えると、数メートル前にまた現れたりしながら歩いていく。
「どうしよう、レオ。ルキウスとサンもいないのに、このまま私達だけで追いかけるの?」
アテナが不安そうに聞いてくるが、俺はあることに気づく。
「…足跡だ。あいつの足跡が見える。」
人型バグの通った後の地面を注視すると、うっすらと黒い足跡が見えた。
「…多分、多分だけどこれは消えない。ルキウスとサンを呼んできてもまだ追いかけられるよ。」
これは根拠のない勘だったが妙に自信があった。
「…アテナ、2人を呼んできて。俺はあいつの後をつける。…大丈夫。後をつけるだけにするし、1人であんまり遠くまでは行かない。バグが出て危険だったら逃げるよ。」
アテナは不安そうな顔のままだったが、頷いて宿へと走る。
そして俺は人型バグを追う。
人型バグは歩いてはいたが、時折消えては数メートル前にまた現れるという瞬間移動らしきものを使うのでその分速い。
あいつは何かを知っているんだ。
バグの正体が人間なのかどうかってことも知ってるはずだ。
…先にあいつの"何か"を知っていれば俺達は、オリビアと共に進むことができたんだろうか。
■■●□●●●■
▼???
だいぶ体を動かしやすくなった。
相変わらず黒いが。
声も少し伝わりやすくなったようだ。
彼らはどうやら予期せぬ事態とであったようだ。
あの1体は一段階上へと進化する途中だったようだが、失敗に終わった。
自分を守るために自己生成したお守りを手放したからだろう。
…しかしそれを渡されたアレは何者だろうか。
2人で動くように誘導していたつもりだったが、"獣"とあの者が増えているのも気掛かりだ。
何はともあれ、彼をあそこまで誘導するのに足跡を残していく。
『No.ZEROにま…影響が出…いる…んて!』
あちら側からヒステリックな女の声が聞こえる。
"No.ZERO"?どこかで見た気がするが思い出せない。
この時"No.ZERO"という言葉に気をとられ、自分は油断してしまっていた。
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