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4-●●●●■-足跡
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朝、街は昨日の事なんてまるで無かったかのように賑わっていた。
朝食用のパンや野菜、果物を売る店、仕事に向かう人々。
その人々からは、オリビアの話題なんて一言も聞こえてこなかった。
そんな街を背に、俺達は人型バグの足跡の途絶えた場所へ向かう。
夜に見た足跡はまだ見えていた。
ただ、俺とアテナとルキウスにはハッキリと見えている足跡が、サンには目を凝らさないと見えないそうだ。
そういえば街の人達も足跡なんて無いかのように過ごしていた。
人型バグを見た事がある無いとか、人型バグの話を信じているいないとかで見え方が変わるのだろうか。
「あ、見て!」
足跡の途絶えた場所が前方に見えてきたとき、アテナが前を指差して言った。
そこには、途絶えていた足跡の続きが付いていたのだ。
「ずっと先に続いていってるな。…どこまで行くんだろうな…。」
「ホームシックか~?ルキウスく~ん?」
「なっ!アホか!」
湿った空気を変えたくてルキウスをからかった。
そんなやりとりをしている俺達に、サンが声をかけてきた。
「しばらくは戻れないだろうな…。…本当に行くんだな?」
「…ああ。俺は行く。どこへだろうと行って、バグによる悲惨な出来事を一つでも多く止められるようにあいつから情報を得る。」
俺はオリビアの事のような思いはもうしたくない。
この気持ちは4人とも同じだと思っている。
「よし!行こう。」
ルキウスが俺の背中を叩いて言った。
こんなときに仲間がいて、そう言ってくれるのは心強い。
「行くなら早めに動いた方がよさそうだぞ。」
サンの視線の先には、人型バグの足跡の横からじわじわと10cm程の蟻や尺取り虫のような形のバグが何体か沸いてきていたのだ。
バグを見て、オリビアのことを思い出して一瞬息が止まる。
…こいつらは何もない所から発生した。
人間がバグになったわけじゃないんだ。
火炎魔法[ファイアーガン]
俺は沸き出たバグに向けて、両手をピストルの形にして指先から小さな火の玉を連続して撃った。
バグは10cm程と小さかったので、火の玉が1発当たれば倒すことができた。
「…お前、技にもっと良い名前つけようぜ。」
あらかた片付いた時、ルキウスが俺の肩に手を起き言った。
何故か憐れまれている…。
俺は余計なお世話だ、と手を払いのける。
「俺なら…そうだな、季語を使って、うーん…"蛍火"って言葉を入れたりとか…」
ルキウスは俺が聞いていないのに続けている。
だいたい、ルキウスの付ける名前はカッコつけすぎててちょっと恥ずかしい。
「はいはい、置いてくぞー。」
「あ、待てよ!」
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