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▼Athena
『ところで君は何者かね。黄昏世界の住人ではないようだが、かといってNo.ZEROとも姿が違う。一体君は何者かね。』
さっきのゲノムとかいう人の言葉にはずいぶんヒヤリとさせられた。
ベラベラと喋りすぎだし、私のことまでごちゃごちゃ言ってきた。
まあ黙らせることができてよかったけれど。
それにしても、レオやルキウスをどうフォローすればいいのか考えなくちゃ。
忘れてくれるのが一番だけど、あの2人は黄昏世界の住人であるサンと違って忘れさせることが出来ないし…。
面倒なことになっちゃったなあ。
4人で手分けしてこの家を捜索することになったけれど、私には気になっている所がある。
この家、階段の踊り場の壁の一部が回転して、中から壁掛け棚のようなものが出てくる。
そこに何か隠すことが出来る。
階段踊り場の壁の一部をぐっと押す。
ガタンと音がして壁の一部がぐるんと回転する。
出てきたのは十字架の彫刻で、何か文字が彫られている。
私は自然とその彫刻に手を伸ばしていた。
「あ!アテナ待って!触っちゃダメだ!」
レオの声がしたけれど、私はすでに彫刻を手にとってしまっていた。
何故ダメだと言われたのかわからないけれど、とにかく彫刻の文字を確認する。
- Claire Smaragd -
「…クレア・スマラクト…。」
文字を読んで、これが何なのかを察した。
なんで…こんなものを…!!
そう思って、下唇を噛む。
その時、ブウゥゥンと空気の震える音がした。
見ると、雀蜂型のバグが10体ほど私を取り囲んでいた。
「アテナ!ごめん!コーイチさんから、お墓には触らないでって言われてたのに伝えてなくて!」
雀蜂型バグの向こう側からレオの声がする。
…なるほど。
こいつらはこれを守るための存在なのね。
彫刻を置き、深く息を吸う。
彫刻刻まれていたのは、クレアの名前。
それを見てから私の中に嫌な感情が渦巻いているのがわかる。
それを全部ぶつけるように魔力を高める。
水魔法[Calabrone]
本来ならこの技は30cmほどの大きさの水の玉を数個出すもの。
しかし今は、人間でも包み込めそうな水の玉をバグと同じ数だけ出す。
それに加えて、ただの水ではなく、粘度を上げる。
一度入ったら脱け出せないように、まとわりつくように。
[Calabrone]、本来の意味は雀蜂。
「負けるわけにはいかないの。」
雀蜂型バグを睨み付け、その動きに合わせて水の玉で追いかける。
「…私はクレアに、負けるわけにはいかないの。」
誰にも聞こえないように呟いた。
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