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「な…なんで俺だけなんだよ?」
俺は思わず一歩後ずさって、問う。
『そこがNo.1037のために作った場所であり、お前がNo.1037だからだ。お前以外は体が崩壊する。』
「レオ!こんなやつの言うことなんて聞いちゃダメよ!」
アテナの叫びに、人型バグはため息を吐く。
そしてサンを指差した。
『本当ならお前とNo.1037の2人だけでここまで来てもらう予定だったっていうのに…。』
サンはそう言われて、ハッと目を見開いた。
「俺…あの時アテナに聞いたわけじゃなかった…。今思い出したが、お前らが村を出ること、いつの間にか知ってて気付いたら一緒に行くことにしてたんだ…。」
サンの話によれば旅立ちのあの日よくわからないが何故かふと、レオについていかなければいけない、と思ったそうだ。
俺はアテナから聞いたんだと思い込んでいたが、思えばあの時、アテナがサンに話す時間なんてなかったはずだ。
『…とにかく時間がない。No.1037、ついてこなければお前は死ぬだけだ。』
「!?…なんで死ぬことになるんだよ!?」
人型バグのことはやはりよくわからない。
死ぬとか、ついていくなら俺しか行けないようなことも言ってたけど、どれも信じられない。
でも俺は…。
「レオ、どうするかはお前が決めろよ。」
「ルキウス!!行ったらダメに決まってるじゃない!」
ルキウスは俺を真っ直ぐ見ながら言ったが、アテナはそれに反発した。
「この旅はレオが始めたんだ。それに行けんのレオだけなんだろ?俺らがどうこう言うべきじゃない。」
「ルキウスはあんなよくわからないやつのこと信じるの!?レオに何かあったらどうするのよ!」
ルキウスとアテナの言い合いは続いている。
こんなとき、俺のために争わないで~、とか言えばいいんだろうか。
「信じるっつーか、う~ん…。何となくだけどよ、敵じゃねえよ。こいつ。」
ルキウスは人型バグを指差して続ける。
「なんか、俺に似てんだよ。バグみたいになってて姿はわかんねえけど、なんかもっと根本的な部分で似てる気がすんだよ。それに何より俺が信じるのはこいつじゃない。レオだ。」
ルキウスの言葉にアテナはでも、と言いかける。
それを遮るように俺は声をあげる。
「俺行くよ。」
みんなの顔が俺に向く。
アテナの不安いっぱいの顔、俺を信じてくれるルキウスの顔、どうしていいかわからない困り顔のサン、表情もわからない人型バグ。
一人一人の顔を見て、俺は続ける。
「俺は行く。その"証拠"とやらに案内してほしい。ここまで来て、得られるものがまだあるなら俺は行く。それに人造人間だとか何だとか、俺の問題なんだ。ちゃんと確かめてくる。」
アテナは泣き出しそうな顔になり、サンは心配なのかまだ困り顔をしていた。
「…お前がそう決めたなら、行ってこいよ。」
ルキウスだけがそう言って笑顔を向けてくれた。
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