8-■■■●●-わかれ

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『時間がない。さっさと行くぞ。』 人型バグはそう言うが、別れを言う時間くらいはくれるようだ。 「サン、2人を連れてスィフル村に帰っててくれ。俺はどれくらいかかるかわかんないけど、こっちが終わったら帰るから村で待っててほしいんだ。」 サンの前に立ち、サンに告げた。 お前も一緒に、と言いたそうなサンに頼むぞと強引に言った。 「アテナ、ちょっと行ってくるよ。先に村に帰って待っててほしい。俺もちゃんと帰るから。」 アテナはまだ俺を止めることを諦めては居なかった。 それでも俺も譲れない。 それを悟ったのか、俯いて何も言わなくなってしまった。 「ルキウス。いつだって背中を押してくれたこと…感謝してる。アテナとサンのこと頼むな。」 ルキウスだけは笑顔で俺の言葉を聞いてくれた。 「バーカ、お前に頼まれんでもわかってるよ。…ほら、」 ルキウスは右手を差し出した。 俺はその手を掴み、握手を交わす。 「餞別だ!」 ルキウスがそう言うと、掴んでいる右手からビリビリっと電撃が流れてきた。 しかしそれは感電するような電流ではなく、俺に力を与えてくれる雷魔法の一種のようだった。 「これでレオも簡単な雷魔法なら少しは使えるだろうよ。まあ、今渡した魔力が尽きたら終わりだけどな!」 ルキウスはニカッと笑った。 せっかくルキウスが笑顔で送り出そうとしてくれているのに、俺の方が泣きそうだ。 別に永遠の別れってわけでもないのに。 「ありがとう…。行ってくる!」 じわりと滲んだ涙を隠すようにぐしゃりと笑った。 ルキウスとは親友と言えばいいのか、相棒と言えばいいのか、兄弟と言えばいいのか…。 時には喧嘩をして、時には共に戦って…助け合い、語り合い、笑い合って過ごしてきた。 行かなければ死ぬ、とかいう命をかけた場所に行くのに、ルキウスの支えがないのは精神的にツラい。 それでも…。 「行こう。案内してくれ。」 俺は人型バグの方に向き直って言った。 俺の言葉に、人型バグが動きだそうとした時だった。 「…あなた一体何者なのよ…?レオをどこに連れていくの!?」 アテナが人型バグに叫んだ。 『…お前こそ何者だ?…お前の"根"はNo.ZEROのようだが、No.ZEROは銀髪でもそんな緑の瞳でもないはずだ。名前も違っ』 「!!黙って!!」 水魔法[Calabrone(カラブローネ)] 水の玉が人型バグを囲むと、潰すようにぐっと集まる。 しかし人型バグは2mほど横に瞬間移動のように移動して避けた。 『…これ以上邪魔をしないなら今は黙っててやろう。No.1037がどうするのか最終的に判断するのはこいつ自身だ。』 アテナは下唇を噛んで悔しそうな、後悔しているような顔をしていた。 『行くぞ。本当に時間がない。』
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