9-■■■■●-研究所

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階段を上がると、また同じような無機質な感じのする廊下だった。 所々に扉がある。 しかしさっきと違うのは、白衣の人だけでなく、青い服を着た人もいるということだ。 格好からしておそらく警備員。 『侵入者ありとの情報!捜せ!』 警備員数人が慌ただしく動き、叫んでいた。 バレないようにしていたと思っていたのに見つかっているようだ。 さっきのバグとの戦闘が原因だろうか。 白衣でも探して紛れ込もうか…。 しかしボロが出たら逃げられなくなるかもしれない。 幸い登りの階段は比較的近くにある。 そこに向けて動き出そうとした瞬間、今上がってきた階段から人の気配がした。 マズイ、と思い何も考えずに近くの部屋に飛び込んでしまった。 部屋を見渡して、誰もいないのを確認して安心した。 安心したが、この部屋もまた最初に入ってきた部屋と同じように使われている気配のない部屋だった。 山積みの資料のような紙の束は埃が被っている。 ふと、一冊のノートが気になったので手に取ってみた。 そういえばこれだけ埃を被っていない。 表紙をめくると『日誌』とだけ書かれていた。 ページをめくってみる。 『今日からメイン研究室に配属となった。いの一番に命じられた仕事はNo.402の廃棄だった。心臓が鼓動しなかったそうだ。廃棄場から戻る際にはついでにNo.403の材料を持ってこいと命じられた。』 俺はそこで一旦手を止めた。 これは人造人間を造っている人間の日誌なのだ。 嫌な気分を抑え込んで、パラパラとめくっていく。 『心臓が鼓動しなかった』『自我が目覚めなかった』『形状が保てなくなった』… 『実験失敗』『廃棄』の文字が続いていく。 読めば読むほどに気分が悪くなる。 俺はパラパラとめくっていた手を止めて、数ページ戻る。 実験以外のことが書かれていそうな所があった。 『僕が空間魔法を使えることをレイチェルが聞きつけたらしい。コンピューターの中に別空間を作ることは可能かと聞いてきた。なんでも妹さんのお墓を作ってあげたいそうだ。昔住んでいた家や、現実と変わらない世界を作れないか、と。難しいが、楽しそうだ。やってみよう。』 そこからは、実験の他にこの別空間のことも書かれ始めた。 しかしすぐにはうまくいかない様子だった。 実験がNo.600を過ぎた頃、別空間のことは少し進んだようだ。 『ざっくりとだが、別空間に世界が出来た。しかし僕の魔法では管理しきれない。だからコンピューターに管理させたが、どうしてもが発生してしまう。』 『別空間にコンピューターによる人工知能を搭載して作り上げた人を住まわせた。彼らにはバグを修復する力を与えておいた。』 そこからまた数ページめくっていく。
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