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たった2人…その言葉に、ある仮説が頭に浮かぶ。
「なあ、リク、あんたもしかして」
『さて!俺の目的はこの研究所を壊すことだ。』
俺の言葉を遮るようにリクは大きな声を出した。
『だが、このまま壊せばお前は黄昏世界とともに死ぬだろう。しかしお前はこの研究所に生み出されただけで何も悪くはない。それなのに死ぬのは理不尽だろう。』
リクはかけていたゴーグルをぐいっと上にあげた。
リクのその瞳は、俺と同じ黄金色をしていた。
そしてそれは、さっきメイン研究室の手前の部屋で見た瓶の中の目玉と同じだった。
俺の仮説は、疑問点を含みつつも確証に変わる。
『そこでお前には選択肢をやろう。黄昏世界を捨て現実世界を生きるか、このまま黄昏世界と心中するか。どっちだ?』
俺は無意識に後ろに一歩下がった。
研究所を壊す?黄昏世界を捨てる?現実世界?生きるか死ぬか?
ぐるぐると言葉だけが頭の中を巡る。
「なんだよそれ…?よくわかんねえよ!黄昏世界とか現実世界とか…わかんねえけど、あんたが研究所を壊さなけりゃいいだけの話じゃねえのか!?」
リクの勝手な目的と、頭の中の混乱で口調も荒くなり叫んでしまった。
そんな俺に対して、リクは落ち着いた様子で答える。
『この研究所ではずっと、こいつらの勝手で命を造っては廃棄するのを繰り返している。それを止めたいと思って何が悪い。』
返せる言葉がなかった。
リクの言葉を信じるのなら、確かにこの研究所のやっていることは人非道的だ。
でも、だからと言って生きるか死ぬかを選べなんて簡単に答えていい話じゃない。
「…ルキウスやアテナやサンはどこにいるんだよ?俺の体があそこにあるならみんなもどこかにいるんだろ?」
俺は叫んだが、嫌な予感はしていた。
『…ルキウスという人物については、日誌を読んだだろ。』
ここに来る途中、確かに日誌は読んだ。
なぜ知っているのだろう、読むように仕組まれていたのだろうか。
訝しむ俺に、リクは続ける。
『…黄昏世界の今の管理責任者であるレイチェルという人物が実験体No.666の脳の解析データをもとに作り上げた人工知能の1人、それがルキウス・アウレアだ。
つまり、現実世界にルキウス・アウレアは存在しない。』
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