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頭を殴られたかのような衝撃だった。 ルキウスが現実世界に存在しない、ということはルキウスの命は黄昏世界にしかないということだ。 『アテナと呼ばれる人物については、お前の選択しだいでは何も話せない。  それからサンとかいうやつは、黄昏世界に多くいる人工知能の1人だよ。現実世界には居ない。  黄昏世界ってのはどんなに高性能のコンピューターで管理しようとも必ず不具合が起きる。その不具合のことをバグっていうんだが、いちいち直してたらキリがない。だから黄昏世界の住人として人工知能を住まわせて、そいつらにバグを修復する力[リペア]を与えたんだ。  …[リペア]を使える者と使えない者、その違いは実際の脳をもとに作り上げられた人工知能かどうかだ。お前やルキウス・アウレアにはもとにしている脳がある。だから[リペア]が使えないが、サンってやつは一から人工知能として作られている。[リペア]が使えるのはそういうやつだ。』 現実世界にはルキウスだけでなく、サンまで居ない…。それは俺にとって、現実世界に行く意味などないと言っているのと同じことだ。 俯いて、拳を握る。 誰も居ない現実世界になんか… 『…お前が黄昏世界に残るなら全て壊すが…お前が現実世界に行くのなら、俺は黄昏世界を壊せないだろうな。』 リクの言葉に、顔をあげる。 『お前が現実世界に行くなら、俺はお前を連れて研究所を脱出する必要がある。だがそうなれば研究所を壊している暇はない。』 ここまで来たのに骨折り損にはなるがな、とリクはため息とともに付け加えた。 俺が現実世界に行けば黄昏世界は壊されることはない…。 『…今のところは、だがな。』 リクはそう言ったが、俺は決めた。 「現実世界に行けば、黄昏世界は壊されないんだよな…。じゃあ俺は行く。」 アテナのことはわからないが、ルキウスやサンは黄昏世界の中にしかいない。 俺が現実世界に行けば、黄昏世界は壊されない。みんなの世界はなくならない。 いつかリクが黄昏世界を壊すなら、俺はあんたの近くでそれを止める。止めてやる。 そう心に決めて、真っ直ぐリクを見る。 『…そうか。なら、行くぞ。』 リクが地面に手を着くと、そこから辺りの景色が白く変わっていく。 たちまち全てが真っ白になって、どこまでも続いていそうな白い空間に俺達2人だけとなった。
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