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一方でルキウスの方には蜻蛉型バグが行ったようだ。
数は4匹だが、そこそこ大きい個体ばかりだ。
「飛んで行かれると厄介だな。」
雷魔法[青柳の壁]
ルキウスの雷魔法が蜻蛉型バグの進路を阻むように現れる。
それはまるで柳の木のように、縦に何本もの雷の線となり壁を作っていた。
蜻蛉型バグの1匹はその壁に突っ込み、バリッジジ…と音をたてて消えていく。
「あ?1体だけかよ」
残りの3匹は壁を回り込んでルキウスを狙う。
それぞれが壁の右、左そして上からルキウス目掛けて飛んでくる。
雷魔法[白緑の羽]
ルキウスから四方八方に小さな雷がいくつも飛ぶ。
その一つ一つの威力は小さいが、蜻蛉型バグは避けきれずにいくつも当たる。
ダメージが溜まっていき3匹とも崩れて消えていく。
「よっし!俺の勝ち!」
喜んでいるルキウスだが、俺は知っている。
今の技はコントロールができていなくて、狙い撃ちできないことを。
そして一つ一つの威力が小さいが故に、倒せるかどうかは賭けに近いことも。
2人が戦っている間、俺もバグとの戦闘をしていた。
俺の相手は体の部分だけでも俺と同じくらいの大きさの蛾型バグ、そして犬程の大きさの蟻型バグ3匹だ。
蟻型バグのうち1匹が先陣をきって俺に向かってくる。
火炎魔法[ファイアートラップ]
俺は魔法を地面に向けて放つ。
それは地面を伝って蟻型バグの足下までいくと、一気に燃え上がった。
相手からすれば地雷を踏んだかのように、突然地面が燃え上がったと思うだろう。
目の前で1匹が燃えて崩れていくのを見てか、他の3匹は少し怯んだように見えた。
火炎魔法[ファイアーサークル]
怯んだ3匹を囲うように火炎魔法の円が現れる。
そして柱のように縦方向に燃え上がる。
蟻型バグ2匹はその中で燃えて崩れていく。
しかし蛾型バグはギリギリ回避したようだ。
とはいっても羽に火がつき、落下していきつつも俺に攻撃をしてきた。
燃えかけの羽を羽ばたかせ、鱗粉を飛ばしてきた。
「おわっ!なんだよこんなもん!」
飛んでくる鱗粉を手で払おうとする。
すると鱗粉の触れた所がシュッと音をたてて火傷のようになった。
「いってて…」
右腕の肘から先、そこそこ広範囲だが強い火傷ではない。
それに火炎魔法を使う身として火傷には耐性がある。
見た目はあれだが思ったほど痛くはない。
火炎魔法[ファイアーソード]
戦うといえばやはり剣だ。
その剣で俺は、羽が燃えつきて地面に落ちた蛾型バグにトドメをさす。
蛾型バグは斬った切口から炎が広がり、燃えて崩れていく。
「2人とも片付いたのね。」
アテナが声をかけてきた。
バグの大群はこれで全部だったようだ。
「あ、人型バグは!?」
「…いねぇ、な。」
辺りを見渡してルキウスが言った。
「…さっきのバグたち、人型バグが呼んだのかな。」
「そうでしょ。だってアレの歩いた跡から出てきたのよ。そしてアレ自体は逃げてるんだし…。」
アテナはそう答えてくれたが、俺には何か違和感があった。
その違和感の正体はわからないけど。
「…あいつ、追って来いって言ってた。会話が可能ならバグをもっと何とかできる方法もわかるかもしれないよな。」
「ちょっとレオ!?まさかアレを追いかけるって言うの?バグを呼び出してくる得体の知れないものなのよ!?」
「でも、俺はもうバグに何かを壊されたくない。」
故郷の町を思い出す。
両親も町の人も家も何もかもバグによって潰された。
「スィフル村の皆を潰されるようなことがあったら俺は…!」
耐えられない、最後までは言葉にできなかった。
「…とりあえず、今からは無理だろ。どこまで追っかけるかもわかんねえのに、俺達は手ぶらに近い。それにもう夜だ。とにかく帰ろうぜ。」
「ルキウス!あなたまで追いかけるつもりなの!?」
「おう。レオは俺の弟分であり親友、相棒だ!一緒に行くぜ!行くなら明日の朝だな!」
ルキウスは俺に笑顔を向ける。
良いことを言っているような気もするが、俺にはわかる。
ルキウスは自分が行きたいのだ。
俺達はとにかく一度帰ることにした。
何故かわからないが、人型バグは消えただけで、またすぐに見つかる気がしていたのだ。
帰り道、アテナはずっとムッとした顔をして考えこんでいるみたいだった。
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