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2-●●■■■-"オリビア"と共に
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▼LE0
「なーぁ、俺達、何やってんだろーな…。」
街の宿の食堂にて、俺はテーブルに頭をつけて嘆いた。
あの後、街までは思ってたより距離があって、ヒィヒィ言いながら昼頃に街に着いた。
街はそこまで大きくないが、人は多い。
宿の確保や昼食の後はずっと情報収集をしていたが、これといった情報も得られないまま夜になっていた。
「何回『君は何を言ってるんだ』って笑われたかなー…。」
一つくらい目ぼしい情報が見つかると思っていたのに。
情報はむしろ、人型のバグなど誰にも信じてもらえなかった。
「俺も見てないから、半信半疑だ。」
人型バグを見てないサンも信じていないらしい。
だからサンには、大きなバグの群れについて聞き込みをしてもらっていたが、そっちも特に情報は無かった。
他の2人も俺やサンと同様、大した情報はなかったらしい。
「そもそも、ここに来た事が間違ってたんじゃないでしょうね。」
アテナがジロリとルキウスを睨む。
「え!?いや、間違ってねーよ!!…多分、勘だが。」
最後に不吉な一言が聞こえたが、俺もここに何かヒントがあるような気がしている。
…多分、勘だが。
「はい!お待ちどうさま!!」
テーブルに飲み物や食べ物が運ばれてきた。
テキパキとテーブルに並べていくこの少女、茶髪のポニーテールに空色の瞳、眩しい笑顔でハキハキした声、歳は同じくらいか。
この健康的美人、宿のオーナーの娘らしい。
「お客さんたち、どこから来たの?」
「ここからずーっと南の方にあるスィフル村。」
ルキウスが答える。
"ずーっと"なんて言ったのは、思った以上に遠かったとルキウスも思っていた証拠だろう。
「スィフル村!?ずいぶん遠くから来たね!」
他人から見てもやっぱり遠いらしい。
健康的美人の名前はオリビア・ヴォルフというそうだ。
「さっきのきいちゃったんだけど、4人は何か情報集めしてるんでしょ?」
「そうよ。あなたに聞いたってどうせあなたも笑うんでしょうけど。」
アテナの言い方がやたら尖っている。
「何なに?面白いことなの?」
興味を持ったオリビアにも一応聞いてみる。
「人型のバグを見たことないかな?俺達それを追ってるんだけど。」
「…人型のバグ?何それ…」
驚くオリビアに、影のように黒い姿はバグそのものなのに人の形をしていることを説明した。
やっぱりオリビアにも信じてもらえないんだろう。
「それ怖いね。大きさは?何か攻撃してくるの?」
俺の説明を聞いたオリビアの口から出た言葉は、俺達にとっては驚きだった。
誰にも信じてもらえず、笑われたのに。
オリビアは信じてくれて詳細を聞いてくれてる。
「大きさは多分、俺と同じくらいだった。そいつ自体は攻撃してこなかったけどすぐに見失っちまった。ただ、そいつの居たところから蜻蛉やら蛾のデカいバグが何体も出てきたよ。」
ルキウスが答えた。
「え…。じゃあとにかくそれは危険ってこと?それがこの街に居るの?」
「いえ、こっちの方角に行くのを見ただけよ。今日いろいろ聞き回った感じだとこの街には居なさそうね。…まあ明日ももう少し聞き込み続けるけど。」
そうアテナの言う通り、明日ももう少しこの街で情報収集を続けるつもりだ。
情報ゼロの現状じゃどこに行けばいいか、指針がないのだ。
「じゃあ明日さ、私も一緒に聞き込み行っていい?」
こんな俺達に付いて行きたいなんて、オリビアはやっぱり変わり者なんだろうか。
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