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「なぁ。」
「んー?」
「暇。」
「もう少し待って。」
「もう待ってる。」
「だからもう少し。」
「……わかったよ。」
さっきから生半可な返事しか返さず、夢中で画面を見て振り向きもしない龍聖に半分呆れ、真琴はベッドに寝そべり携帯をいじる。
せっかく久しぶりにゆっくり過ごせると言うのにちょっとタイミングが悪かったようだ。昨日発売したというRPGゲームの攻略に夢中なのだ。確かに前作が好評で真琴もプレイしていたし、ハマりもした。もちろん続編も楽しみにしてたので購入もしている。後で自分もプレイするからネタバレは回避したいのでなるべく画面も見ないようにしている。
だけどまずはゲームよりも久しぶりに2人でのんびり過ごせる方が優先ではないのか?昨晩から楽しみにしていたのにこの有様で、何となくわかってはいたが真琴は唇を尖らせる。
しかし、こうもゲームに夢中になられては手持ち無沙汰になる。動画を見ながらどうしたもんかと、考えながら今度は画面に夢中になっている龍聖の背中にもたれ掛かる。構ってくれ、と先程から何度か伝えても返事は変わらず「待て」で、俺は犬か?と一瞬頭にきた。
でもゲームに夢中な龍聖の楽しそうな横顔を見てその気も失せた。なにせ、顔がいい。楽しそうに笑ってる所も、少し眉間にシワを寄せてる顔も…全てに見惚れてしまいそうになる。好きな所は顔以外にもあるが、とにかく顔が好みでそんな龍聖とこうして恋人として過ごしているのを未だに疑ったりすることもある。
半年ほど前に突然このイケメンに声をかけられ、仲良くなった。そして、3ヶ月前・・・告白をされた。真琴は元から恋愛対象が男だったし、龍聖と居るのが楽しくて仕方なかった。顔も好みだし、話も合うし、龍聖と過ごす時間がとても落ち着く事もあって付き合うことにした。付き合い始めると、今まで以上にコイツの事が好きになった。
顔だけではなく、性格も含めいつの間にか真琴は龍聖の全部が好きになっていた。
龍聖は龍聖で変わらず好きだと伝えてくれる。ゲームをしている時以外は真琴を構い倒して甘やかしてもくれる。
むしろ暑苦しいほどに引っ付いてくるのはいつも龍聖の方だった。
だけど今はこの状況だ。
放置されてはや2時間程が経過している。短めの映画ならとっくに見終わっている。
新作ゲームの攻略に夢中な龍聖の意識をどうやって自分に向けさせるか……、かれこれ1時間近く考えている真琴。
久しぶりに恋人の家で二人きりと来ればイチャイチャしたいに決まっている。ゲームをしている相手に抱きついたり、邪魔をしてみたり、ちょっかいをかけてみたり色々してみたが、どれも効き目なし。
黙々とゲームを続け、時には制止の言葉をなげかることもあった。
また大人しく龍聖の背中に体を預け、少しでもくっついて居ようと試みた。
「ったく。そんなに、ゲームが好きかよ。」
「好きだよ。」
「俺より?」
「マコの方が好き。」
「なら構え。」
「それはもう少し待ってて。」
「ちぇっ、なんでだよ。」
「なんででも。あと少しだから、ごめんね?」
そう言って振り返っておでこにキスをされた。それだけで少し嬉しくなってしまう真琴は自分でも単純なヤツだと思った。
しぶしぶ龍聖の背中から離れ近くのベッドにダイブ。また携帯をいじって時間を潰すことにした。
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