兎狩り

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✩.*˚ 窓から射す朝日の明るさで目が覚めた。 薪を燃やす匂いとパンの匂いがする。 もう二人共起きてるんだな… そう思って急いで服を着替えて用意するが、筋肉痛で足が上がらない。 雪山恐るべし… 夏山しか登ったことないから知らなかったけど、ルイ達がいなかったら絶対に遭難してた… 雪ばかりで景色が変わらないから方向感覚がおかしくなるし、寒さで五感も上手く働かない。 これでは先が思いやられる。 「《凪》、《嵐》、おはよう」 僕の命を預ける二振りの剣に挨拶した。 真珠色に光る双剣は、この世界の神龍の鱗で作られているらしい。 夢の中で一度だけ人の姿で現れたのを見て愛着が湧いたので時折声を掛けている。 別に何も無いけど勝手にやっている。 ただのルーティン、もしくは変人だ。 「おはよう」 「おはようございます」 「起きたか」 ベティとルイが返事を返してくれる。 ホントに一人で行けとか言われなくて良かった。 「ソーセージと玉ねぎのスープ、クルミのパン、ホットミルクを用意しました。 冷めないうちにどうぞ」 「ありがとう、ベティ」 朝から温まるメニューだ。 僕とルイが食べる間、彼女は給仕してくれていた。 「一緒に食べればいいのに」と僕が言うと、ベティは慌てて首を横に振った。 「そんな、滅相もない。 私は使用人ですので…」 彼女はそう言って線を引いた。 その断られ方はなんだか寂しいな… 一緒に食べれたらいいのに… 僕らが朝食を食べ終わると、彼女は皿を下げてキッチンの隅で一人で冷めた食事を取っていた。 作った人が冷めた食事をとるのはなんだか申し訳ないな…
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