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✩.*˚
山は一面真っ白で、目が痛くなるほど白く輝いていた。
ルイは目印の色紐を木に付けながら進んで行く。
辺りを警戒しながら雪山を散策すると、皮がめくれて傷付いた木が何本もあった。
「鹿なんかが齧った後だ。
ビック・ペーデスでは無い」
ルイはそう言ってまた先に進んで行く。
頼もしい背中を追いながら、僕は彼に置いていかれないように山道を進んだ。
結局一日目はビック・ペーデスには出会えなかったので収穫ゼロだ。
「明日はもう少し上の方に行く。
岩場が多いからそこにいるかもしれない」
「OK、また明日だね」
「歩くのは少し慣れたか?」
「少ししんどいけど大丈夫」
「そうか」とルイが頷く。
「小屋に戻ったら立ち回り方を教える。
雪の上で転げ回る覚悟をしておけ」
「えぇ?今からまだ訓練?!」
「嫌そうな声を出すな、備えあれば憂いなしだ」
なんでそんなにタフなんだよ…
夕食の時間までルイにみっちりしごかれた。
ビック・ペーデスとの立ち回りの仕方や、綺麗な雪を集めて水を作る手伝いをした。
その間、ルイは結構話をしてくれた。
彼は普段は寡黙な印象だったが、自分から色々話をしてくれる彼が少し新鮮だった。
「この山小屋は誰が管理しているの?」と訊ねると彼は、少し黙った。
「元々は私の大切な人が使っていたものだ。
今は私が管理して、年に一度ここに《兎狩り》に来ている」
大切な人という言い方が引っ掛かった。
近いような遠いような微妙な距離の人…
「…その人って、もう居ないの?」
恐る恐る訊ねると、ルイは「随分昔に死んだ」とだけ答えた。
毎年ここに来るってことはそれだけ思い入れがあるということなのだろう。
今でもその人の事を思ってるってことなのだろう…
「その人は《兎狩り》が好きだったの?」
「好きだったな。
子供のように目を輝かせて兎と戦ってたよ。
素手で首の骨をへし折って倒していた。
毛皮に傷が付かないように、と言っていたが、あれは彼女にしか出来ない技だった…」
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