兎狩り

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「そりゃ、苦労したね…」 「みんなだいたいそんなもんさ… 恵まれていて、戦う理由のない者は戦士や兵士になりたいなど思わないからな」 そう言ってルイはふっと笑った。 「私はそこでエドナ様に出会い、戦士になった。 同じ城で育ったにしても同輩ではない。 一時的に一緒に暮らしてたこともあるが、それはエドナ様が亡くなられてすぐの事でまだ幼い頃の話だ」 「ややこしいなぁ…」 幼なじみカップルではなく、境遇の似た叔父姪の関係みたいなややこしさだ。 ふむ、これはくっつけたらアウトなのかな… 「悪かったな。 でもお前には関係の無いことだ、忘れろ」 そう言ってルイはまた薪を暖炉にくべた。 「とにかく面白半分で人のプライベートに踏み込まないことだ。 おかげで一時ベティと顔を合わせるのも気まずかったんだからな…」 「そりゃ、なんかすいませんでした…」 うーん、複雑…好きって難しいなぁ… 「でも好きなのは本当でしょ?」 「正直分からん。 何でも好きとか嫌いとかそんな単純な言葉で片付けられるもんじゃない。 それに、私がベティに特別な感情を持っているようならエドナ様に合わせる顔がない」 「そういうもんなの?」 「そういうもんだ…」 そう言ってルイは大きなため息を吐いた。 「時々お前みたいなお気楽な人間だったら良かったのにと思う時がある」 「僕が薄情者みたいじゃないか」 「まあ、そうとも言うな」 はは、と小さくルイが笑う。 「まあ、お前にはペトラ様がいるからな。 ベティに手を出す余裕は無いだろう?」 「嫌な言い方だなぁ… ペトラとはまだ何も無いよ」 先日押しかけ女房された状況を思い出して冷や汗が出る。 「まあ、まだ無名と言っても差し支えないからな。 頑張って箔をつけることだ」 やり返せたのが嬉しかったのかルイが楽しそうに笑う。 「兎、()って帰るぞ」 「うん」 ルイの言葉に力強く頷く。 これだけしてもらって手ぶらでは帰れない。 付き合ってくれた二人のためにも必ず成功させたい。 僕は毛布に包まってソファで目を閉じた。
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