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✩.*˚
朝食をとった後、装備を整えて雪山に入った。
昨日の夜とは打って変わって風も穏やかだ。
昨日の目印を付けた場所に戻ると足跡は消えていた。
「昨日の風で足跡が埋もれてしまったな…」
「どうするの?」
「この辺りが縄張りなのは間違いない。
辺りを警戒しながら探そう。
何か見つけたらまず止まって手を挙げて合図しろ。
ここからは無駄なおしゃべりはナシだ」
「了解」
短く返事をして、僕らは無言になる。
ルイが先を行き、僕がそれに習って進む。
奇妙な時間が流れる。
鼻の感覚がなくなってきた頃、前を歩いていたルイが小さく手を挙げた。
ルイが合図した先の背の低い木陰に二人で身を潜めた。
ルイの指さした先に白熊が居た。
僕が指をクロスさせて「違うだろ」と伝えると彼は首を振った。
「あれがビック・ペーデスだ」
「!!」
思わず声を出しそうになった。
なんせ遠目から見ても分かるデカさだ。
兎なわけが…
目を凝らしてもう一度確認すると、白い獣が後ろ足で立ち上がって辺りを見回した。
長い耳が左右に前後を向いて辺りを確認している。
黒い大粒の目が広い視野で辺りを警戒していた。
「…う、兎だ…」
サイズはあれだか見た目は兎だ。
兎にしては頭部が少し小さく、手足もクマのようにどっしりしている。
前足に長い鉤爪が二本伸びていて、三本目以降は短い。
「まずいな…ミツルには荷が重いな」
ルイが小さく呟く。
彼も想定してたより大きかったらしい。
下がろうとルイが合図した時だった。
「バオォ!」
兎が鳴いた。
そんな声なんかい!
大きめの管楽器のような低く響く声。
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