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『可愛いだろう?
リトル・ベティ・グレだ』
そう言って少女を抱きしめて頬ずりする。
『リトル・ベティ?』
『昔生き別れた妹の名前を貰った。
この子は名前がなかったからな』
彼女はそう言って少女の頭を撫でて抱き上げた。
娘にするように少女に接する彼女が信じられなかった。
それと同時に、彼女がやはり女なのだと実感した。
『しばらくこの子は私が預かることになった。
この子自体は人間のハーフだが、獣人としか生活したことがないらしい。
獣人といる方が落ち着くはずだ』
かなり高めの高い高いをキメながら無表情の少女をあやしている。
少女は少女で人形のように無表情でされるがままだ。
『子供の世話など、エドナ様がすることでは…』
『自分の手で育てずに母親とも娘とも名乗れないだろう?
この子が心を開いてくれるまでしばらく休暇を貰う。
その間、部隊の指揮は任せたぞ、ルイ』
『そんな急に…』
『なぁに、有事の際は駆けつける。
それにこう見えて私は子供の扱いは上手なんだぞ!』
そう言って彼女は本当に休暇を取り、別荘にベティを連れて引きこもってしまった。
まあ、しばらくしたら飽きて帰ってくるだろう、と誰しもが思っていたが、彼女は半年たっても戻ってこなかった。
さすがに不安になり、部下に様子を見に行かせたが、相変わらず『待っていろ』の一点張りだったという。
一年ほどたったある日、私も彼女らの様子を見に行った。
少女は少し大きくなっていた。
まだ幼いのに、大人顔負けの身体能力を身に付けていた。
『何だ、ルイか』
一年ぶりの再会に、彼女の第一声はついに二、三日前に会ったかのような口ぶりだった。
彼女らしい言い方だ。
『元気になったろう?
やっと子供らしくなってきたところだ』
『それは良かったですね。
ところで、そろそろ帰還されてはいかがですか?』
『何か問題でも?』
エドナ様はそう言って笑った。
私が横に首を降るのを見て、『だろうな』と彼女は言った。
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