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✩.*˚
罪悪感…すっごい罪悪感…
「…ベティ…まさか、このトカゲが《カラカラ》?」
思ってたより小さい。岩の色に紛れるような茶色と灰色の迷彩柄のようなトカゲは尻尾を入れても30センチもない大きさだ。
鋭い爪や牙があるわけでも無く、動きは鈍い。それというのも身体には鱗が伸びたものと思われるトゲが無数に生えているから、その弊害で動きづらいのだろう。
これの卵って、もしかしてウズラの卵みたいなのじゃ…
「はい。それは正確には《カラカラ》のオスです。メスは貴重なので殺さないでくださいね」
「何でメスが少ないの?」という僕の質問に答えたのは、何故か一緒に着いてきていたアンバーだ。
「《カラカラ》は女王以外はすべてオスなんだ。稀に同じ群れでメスが生まれることもあるがそれは時期女王候補だ。
基本的に女王がいる限り他のメスは繁殖能力を持たない。女王がそういうフェロモンを出していると考えられる。
今回は特別に捕獲を許可するが、女王は必ず生け捕りにしてくれ。
ちなみに女王は鉱石を食べる習性があるから、その食べた餌の鉱石によって見た目が異なる。神銀を取り込んだ個体は《ミスリルリザード》などと呼ばれ、神秘的な銀色の鱗はそれは美しい。自然の作り出す芸術品だな」
「ふーん…まぁ、明らかにオスとは違う見た目なのね?」
「うむ。それだけじゃない《カラカラ》の女王は食べるもので見た目が異なるから、鉱脈を探す時の目安になる。
獣人の一部では食用とされるが、ドワーフ族にとっては無くてはならない存在だ。今回は卵を採取するという目的だからできるだけ傷つけずに捕獲してほしい。
一般的に、卵を産む周期は個体差があるが、だいたい一月に一回、三から十くらいを産むという話で…」
アンバーはその他ずっと《カラカラ》について解説をしていたが、欲しい情報はあらかた理解した。
先行するベティに着いて行く形で洞窟を進んでいると、明かりの届かない洞窟の奥から何やらゴソゴソと物音が聞こえてきた。
止まって音を確認するが、どうやら物音はこちらに近づいてきている様子だ。
「ど、どうしよう…明かり消して隠れる?」
ビビりながらメンバーに確認したが、ベティに「無駄です」と僕の考えは一蹴された。
「相手は暗闇に慣れてる生き物ですから、見えなくて臭いなどを頼りに襲ってきます」
そう言いながら彼女は既に戦闘態勢で拳を握っていた。ベティの戦闘用の手甲に刻まれた魔法陣からは薄っすらと光を滲んでいる。
今までずっと会話に参加せずにいたアドニスも剣を手に僕の前にでた。
その間にも物音は近づいてくる。
小さい小石を蹴飛ばすような音やザッザッという足音に、地面を引きずるような重々しい音が重なる。
音の主はついに明かりの届く範囲に姿を見せたが、その姿を見て僕は言葉を失った…
「おぉ、立派な《カラカラ》のメスだな」と言うアンバーの呑気な台詞に耳を疑う。
これが?!オスと全然違うんですけど!!
オス30センチくらいしか無かったじゃん!
ちゃんと測ってないけど、メスは大きめのワニぐらいの大きさだ。全長7メートルほどの身体は黄色くキラキラと輝いている。
「…あ、アンバー…これは何食べたらこうなるのさ…」
「ふぅむ…白金かな?でもこれはまた違うような…」
アンバーの分析が終わる前にベティが《カラカラ》に仕掛けた。
飛びかかろうとした彼女を牽制するように、《カラカラ》の女王がどぎついピンク色の口をガバっと開いた。
「カカッ!」と笑うような鳴き声の後に女王の口から何かが飛び出た。
「ベティ!」慌てて彼女に声をかけたが、彼女は既の所で《カラカラ》の攻撃を躱していた。
女王の意外な攻撃に、アンバーは「なるほど」と一人で頷いていた。
「魔石を食った個体のようだな。と、いうことはこの鉱脈は魔石の鉱脈か…」
「い?!ま、魔石とか食べるの?!」
この世界では《魔石》というものが存在する。僕も詳しくは知らないが、この世界では一部の例外を除いて、魔法を使うために必要なものだ。
簡単にいうと魔力が電流として、魔法の発動が豆電球が光る事とすると、その電流を流す回路となるのが魔石の役割だ。
「魔石とはいえ、鉱石だからな。ありえないことはないが、珍しい個体なのは確かだ」と呑気に分析しながらアンバーはベティに向かって声をかけた。
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