7人が本棚に入れています
本棚に追加
この小さな身体で背負い続けた荷を受け取る時が来たことを知る。
私も彼女の体を抱きしめた。
私が彼女から巣立つ時だ…
『必ず、貴方に恥じぬ働きを…』
言いかけた私の口元に指を押し当てて、言葉を遮って彼女は笑っていた。
『いいよ、分かっている。
お前の事はなんでも知っているさ』
そう言ってまた私の胸に顔を寄せた。
『まだ帰らないだろ?
今日は冷えるから温めてくれ』
とんでもない発言に私は言葉を失った。
『…本気で言ってます?』
『何だ?年増女が相手じゃ嫌か?』
『いや、そういうことでは…
その…私がですか?』
『お前以外に誰に言うんだよ。
女に言わすなんて酷い男だ』
私をからかう彼女は一人の女性になっていた。
彼女と結ばれた日、私は彼女の荷を引き継いだ。
後日アンバー王から正式に隊長への昇格と、部隊から軍への編成の変更があった。
そこで王の直属の軍を任されることになった。
今までの部隊とは桁違いの人数の命を背負うことになる。
それでもあの人を失望させるわけにはいかない。
私は奮闘し、何とか軍をまとめあげることが出来た。
陛下から軍略や兵種、兵站等の知識を学んだ。
賢くない私には難しい話だったが、優秀な頼れる部下の存在もあり、二年ほど時間はかかったが、戦闘部隊から軍隊に仕上がった。
軍隊が軌道に乗ってきた頃、私に訃報が届いた。
彼女が死んだ…
私の敬愛するエドナ・グレ…
やっと貴方にふさわしい男になれたと思ったのに。
絶望する私を、高く高く青い空が見下していた。
最初のコメントを投稿しよう!