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エドナ・グレの葬儀であの少女に再会した。
喪服を着て棺に縋る小さなベティ・グレ。
ベティの隣で王女筆頭のペトラ様が慰めている。
棺の前まで近づくことを許され、棺の前に立つ。
まだ蓋を閉められていない棺に敷き詰められた花の中、彼女は眠るように横たわっていた。
あの日、隣で朝を迎えた時と同じ、安らかな寝顔…
葬儀も終わり、帰ろうとした私の元にベティを抱いたアンバー王が現れた。
『ルイ、すまないが、ちょっとこの子を預かってくれないか?』
『私がですか?』
まだ泣いている少女を受け取るのに躊躇していると、少女の方が顔を上げた。
花の模様が刻まれた彼女と同じ顔…
『私が抱いても泣きますよ』
そう断りを入れて少女を受け取る。
小さい暖かい身体が私の体に密着する。
疲れていたのか、すぐにしゃくり上げる呼吸が静かな寝息に変わった。
獣の匂いに安心したのだろう…
『うん、じゃあ、頼んだよ』
親戚に子供を預けるような感覚で立ち去ろうとするアンバー王にいつまで預かるのか訊ねると、
『そのうち迎えをやるから』と曖昧な返事を返された。
結局二ヶ月ほど預かり、寝食を共にした。
彼女は泥臭くこの少女を育てたのだろう。
軍の宿営でずっと私に付いてまわり、訓練にも参加した。
ベティが笑うようになった頃、ペトラ様連れられ城に引き取られて行った。
それからも多少の交流はあったものの、成長するにつれ、エドナ様に似てくる彼女を見るのが辛かった。
これがどういう感情なのか、私にはもう分からなくなっていた…
この気持ちを認めることは、私が愛した人を裏切ることだ…
私は彼女と顔を合わせないようにした。
あのお節介な男が現れるまでは…
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