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ルイは僕達の分まで荷を背負って進んでいる。
僕なんて最低限の荷物しか背負っていない。
それに彼は僕らが進みやすいように道を作りながら進んでいることにも気付いていた。
彼は決して厳しいだけの人じゃない。
この訓練を成功させたいと思っているのだって、アンバーに言われたからだけじゃないはずだ。
必死な思いで彼の進んだ後を追い、何とか山小屋が見えてきた。
貧相な小屋などでなく、しっかり木を組んだ十人くらい泊まれそうなログハウスだった。
「よく頑張った、休んでいいぞ」
ようやく僕がゴールしたのを見て、ルイはそう言うと小屋の用意を始めた。
薪を用意して暖炉に火を入れると、外から取ってきた雪を溶かして水を作った。
持ってきた食材などを籠に出して棚にしまうと、ザックからいくつかの麻の袋を取り出して、ログハウスの外にぶら下げに行った。
時々くしゃみをしながら作業している。
「あれ何?おまじない?」
「獣避けのハーブが入った袋です。
ミツル様が居るから用意されたんだと思います」
「臭いの?」
「ええ、とっても…」
「もしかして…ベティやルイも苦手な匂いなの?」
「私はまだに気なる程度ですが、ルイ様は鼻が利くのでむせるくらい嫌な匂いだと思います」
マジか…ルイ大丈夫かな…
「ミツル様は休んでてください。
お食事の用意が出来ましたらお声かけさせていただきます」
ベティにも休めと言われて、暖炉の前のソファに座ると、彼女が毛布を用意してくれた。
硬いソファだったが暖炉の温かさも相まって毛布にくるまって寝入ってしまった。
しばらくして、暖炉に薪をくべる音で目を覚ました。
「何だ?腹が減ったのか?」
ルイの大きな背中が暖炉の前にある。
逆光で表情は伺えないが、声は穏やかだった。
「今ベティが食事を用意している」
「ルイは元気だね」
「疲れてるさ、でもお前やベティほどじゃない。
スタミナはある方だからな」
そう言って暖炉にまた薪をくべた。
パチパチと木の燃える音と火花が飛ぶ。
「私はこの山に慣れてる。
問題はお前だ。
《兎狩り》はあくまでお前自身の手でしなきゃならん。
俺が手伝えるのはこの小屋の中と兎探しくらいのものだ」
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