遊園地デート(仮)

1/17
前へ
/91ページ
次へ

遊園地デート(仮)

「えっ?もう一回言ってくれない?」 『だから〜うちの旦那が言ってたでしょ?親衛隊がどうとか……それ、やんなくて良いって』 「何で?」 『私が知ってるわけないでしょ。朱里が聞けばいいじゃない!』 「まあ、僕としては面倒事がなくなるからいいけど…」 『そうそう。あ、あと!この前のイベントでゲットしておいたよ!新刊!明日送っとくから』 「あざっす!」 『あ、そういえば明日遊園地だよね?明日のデートの報告待ってるからね!』 そう言って一方的に電話を切った姉。 新入生歓迎会のご褒美として遊園地にペアで遊びに行く前日に僕の姉から電話が掛かってきた。 電話の通り、親衛隊の調査はやらないでいいそうだ。 何考えてんだか…義兄さんは… そう思いながら明日の遊園地の準備をしていると部屋のドアからノックが聞こえた。 「また、あのホストかよ……」 ため息を吐き、ゆっくりドアに向かう。 あのホストは僕の部屋に何回も尋ねてくる。毎回玄関先で追っ払ってるけど。 「今度は何の用ですか…」 「………………」 「えっ?輝くん?」 ホストだと思い、誰かを確認せずにドアを開けるとそこには生徒会メンバーの輝が黙って立っていた。 何でここに居るんだろう…もう夜の9時なのに… 「どうしたんですか?こんな時間に…」 僕が話しかけるが輝くんは顔を真っ赤にさせて口をパクパクさせている。 「あの…輝くん?」 「なっ、なんて格好で出てくるの!!」 「?なんか変ですか?」 輝に言われて自分の姿を見下ろすが特におかしいことはない。 この前義兄さんから貰ったダボダボなスウェットに、短パンを履いているだけだ。サイズを間違えたらしいが、勿体ないから部屋着として着ている。 「下!下!ズボンかなんか履いて!!」 「これ、スウェットの下に短パンを……」 「めくらなくていいから!!」 輝に言われて短パンを見せようとしたが止められた。 何でこんな顔真っ赤なの。 「あの、何か用事でも?」 「これ返しに来ただけ!」 勢いよく紙袋を押し付けてくる輝。 中身を確認するとそこには新入生歓迎会の時に貸したジャージが入っていた。 「わざわざありがとうございます。でも、どうやって教師寮に入ったんですか?鍵でもなければ入れませんよね?」 「僕は特待生だから…どこでも行けるようにカードを持ってんの。ブラックカード」 ブラックカードをヒラヒラさせながら言う輝。確か、ブラックカードは成績一位の人しか貰えないんだよね… この不真面目そうな子が… 「……意外ですね…」 独り言のつもりだったが、輝は聞こえてしまったらしい。 「意外って何さ!僕だって頑張ってるんだから!」 「あっ!そういうつもりで言ったわけでは…」 輝は眉を軽くあげ僕を睨んでくる。 ツンデレ属性は接し方が難しい。 「ていうか、新よりは意外じゃない!」 そうだ。一年は新が一位なんだ。 何も知らない人から見たら輝より新の方が意外だよね。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1072人が本棚に入れています
本棚に追加