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「お子様はいらっしゃる?」
エフ氏がだしぬけにエヌ氏に尋ねた。
「え、ええ。今は息子が二人。下の子は産まれたばかりで、上も二歳です」
手にした本を差し出す。
「そうか、息子さんか。この本をプレゼントします」
表紙には、「少年文庫」「未来の世界 SFの世界」と、比較的地味な文体で題名が記してある。
著者の名前は……エフ氏自身だ。
「いや、まだ長男が絵本を読みだしたくらいで、とてもこんな本は読めないと……」
エヌ氏は受け取って、ぱらぱらと頁をめくる。
「ひらがな中心で、とても読みやすく書いてある」
エフ氏にそう言われ、エヌ氏はううむとうなりながら、食い入るようにさらに頁を繰る。
「……いや、これはすごい。自分が読んでも面白そうだ。でも……」
そうして、初めてエフ氏をみすえる。
「ありがとうございます。でも……こんなに難しい文章の本を、二、三歳の子が読むなんて、考えられません……」
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