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(コガッチ! 9組の! たぶんそうだ!)
って思ったけど、今急にそう言ったら、それまでは思い出さずに適当に合わせてたのがバレるから黙っていた。
彼女はつづけた。
「みんなババシャツ着て頑張ってたけど、今どきの子はそんなの着ないかね」
ババシャツ?
そういえば、ヒート☆ックをそう言ってた人いたなあ。今の子も着てるんじゃあ……?
でも、誰かわかったんで、安心して話を合わせてみた。
「そうそう、あっちは寒かったよね。特に9組なんて端っこだったしー」
「9組? ああ、9組も寒そうだったけど。ほら部室がね。新聞部の」
!
コガッチ、ちがーーーう!!
再び検索エンジンがうなりを上げる。
and新聞部 without9組!
新聞部は半年しか入ってなかったけど、友達がいて時々顔を出していた。
誰だ? 誰だ? そんなに人数はいなかったよ。
タテキンか? いや、この背格好… 一番近いのは …キヤモ?
もうちょっと小さかったイメージだけど、背が伸びたとか?
しかしそうだ、このシャキシャキした話し方……。キヤモだ!!
一件該当します と点滅してるあたしの頭ん中。
いやー よかったよかった コガッチって言わんで。
「新聞部かー どうしてるか知ってる? トキサブ…」と、名物部長のトキサブローの名前を言おうとしたとき、ふいに車のライトがあたしを照らした。
まぶしっ。
目がちらちらするが、キヤモだと思った人が「あっ」と小さい声出して驚いた姿が、光の端っこに見えた。
その次の瞬間、別の車があたしたち二人をなめるように照らした。公園で野球をやっている子どもたちのお迎え車のようだ。
あたしも「あっ」と言った。
4台くらいのヘッドライトに次々に照らされたあたしたちは、声を失い…。
そしてその女性は戸惑うように言った。
「あ、引き留めてごめんなさいね。そろそろ息子が孫つれて帰ってくるから、これで」
「ええ、失礼します」
あたしも合わせて頭だけひょこっと動かした。
何台もの車に照らされた女性の姿は明らかだった。
シワのある目じり、張りのないあごのライン、首の横しわ…。マスクをしてもスタイルが良くても隠せない場所がある。
ま…孫がいる年齢って……。
きびきびと走り出す女性を見送りながら思った。
「ウチのおかんよか、歳上じゃん……」
ふいに、最初に声をかけられた時の「遠くから見てそうかなって思ったんよ」という言葉がリピートした。
実家から狭いワンルームに戻ったあたしは、すぐにパソコンを開いて本物の検索エンジンを使った。
今、猫背矯正ベルトを使い、仕事終わりはヨガ教室とストレッチ教室のかけもちだ。
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