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坂道を降って、砂利道を歩き、川辺まで進む。ザーザーと、川の流れる音が大きくなった。
私はその場に座って、目を閉じた。
川の音、鈴虫の声、風の音。
「何て、気持ちいいんだろう」
こんな世界があったんだ。一人の時間、自由な感覚、開放感、安心感。不安や悩みが薄れていく感じがする。
「ん……この音は何?」
目を閉じて耳を澄ます私に、ザラザラという音が聞こえてきた。すぐ隣から聞こえる。
私は、閉じていた目を開けて、音のする方を見た。
お坊さんが、川の水で何かを洗っていた。
「おや、邪魔してしまいましたか?」
「いえ、何をしているんですか?」
「小豆を洗っております」
「小豆?」
「えぇ、私の仕事なので……」
お坊さんに、小豆を洗う仕事なんてあるんだ。
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