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木曜日。今日から7月が始まる。
そして今は7時30分。
同じ車両にのる。
そしていつものこいつがいる。
「おはよう、水無瀬さん。」
声をかけられ、はっとなり、こいつは慌てて、俺のほうを見る。
「うん、おはよう。星崎くん。」
俺が声をかけるまでそっぽを向いていた。
ずっとそう思っていたが違っていた。
ここから隣の扉の近くにいる響谷先生をずっと見ていたんだ。
今まで、こいつはここから響谷先生をずっと見ていて、俺に一切気づかなかったのだ。
毎朝ここっで響谷先生のことを見て、顔を赤くしていた。
こいつは俺目当てでこの時間のこの車両に乗ってるのではなく、響谷先生目当てで乗っていたんだ。
今日も隣扉に響谷先生がいる。
俺達には気づいてない様子。
こいつは今日も顔を染めていた。
あれから1週間こいつを観察して分かったことがある。
響谷先生の数学の時いつも頬を染めていた。
先週の英語の授業で起こした時、顔が赤くなった理由はよく考えれば、よだれ垂らして寝てるところを異性に見られて恥ずかしくなったと考えられた。
そしてその日のホームルームで赤くなったのは俺に話しかけられたから、というわけではなく、響谷先生に呼ばれて赤くなっていたんだと思う。
1限目はよく居眠りをしている。
たぶん朝苦手なのに無駄に早く起きて、あの電車に乗ってるんだな。
1限に数学のある火曜日は、ちゃんと起きている。
しかし2限目はよくウトウトしてた。
何かしらこいつが顔に出るのは視界に響谷先生がいるときなのだ。
水無瀬せれなはわかりやすい。
だけど俺はこいつのこと、それ以外しかわからない。
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