みてるだけの朝。

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窓の方を見るともう真っ暗だった。 洗濯物が干してあったから、それを取り込み、お父さん、お兄ちゃん、私の順で並べて洗濯物をたたんだ。 私の衣類は自室に戻し、二人の衣類は各ベットの上に置いといた。 そのあとお風呂の準備をしながら、使った食器とお弁当箱を洗った。 お風呂が湧いたので、鼻歌を歌いながら、バスタイムをいつも以上に楽しんだ。 リビングに戻り、スマホを触る。 いつも行く眼科と美容院にウェブ予約する。 午前中眼科の予約が取れ、夕方に美容院の予約が取れた。 髪をいじる。 毛先を少し切って、トリートメントをお願いしてサラサラにしてもらおう。 明日が楽しみだ。 心が弾み、ワクワクする。 冷蔵庫にあったものを適当にたべて夕飯を済ました。 「ただいまー。」 10時過ぎ、お兄ちゃんが帰ってきた。 リビングで顔をあわせる。 わあ、汗だくだ。 「おかえり。お風呂あるよ。」 「おう、先入ってくる。」 お兄ちゃんより先にお風呂はいっててよかった。 そのままお兄ちゃんはリビングをあとにした。 私のお兄ちゃん、水無瀬日向は4つ上の大学3年生。 お父さんに似て身長は高く、私と違って陽キャラだ。 しかも趣味が料理で、毎日家族3人分の用意する。 基本家の食事はお父さんとお兄ちゃんが用意する。 私は料理が苦手だから、お父さんに教えてもらった水出しコーヒーとネモネードシロップを作る。 あと、たまに料理を手伝うし米も炊ける。 炊き込み御飯はできないけど。 私たち兄妹だけど、お互い大親友な仲だ。 30分後、お兄ちゃんがリビングにTシャツとパンツ姿でやってきた。 そのまま冷蔵庫をあさる。 「せれなちゃん、夜ご飯ちゃんと食べた?」 「うん、昨日の残りとか、朝ごはんの残りとか。」 「ふーん。あ、マフィン食べたの?」 「食べたよ。」 「どうだった?」 「う、うん。美味しかった。…よ。」 美味しかったと思った。 素直に美味しいっていうのが恥ずかしかったので、テレビを見ながら言った。 「まじ!よかったー。これさ、米粉使ってんの!グルテンフリーなの!」 女子ですか。 こないだの春休み、お兄ちゃんは海外旅行に行ってきた。 異国の食にふれ、食材にこだわるようになった。 ビーガンやらベジタリアンやら、グルテンフリーやら、アーユルヴェーダやら、オーガニックやら。 一度、ビーガンメニューの夕食を用意してくれた。 お兄ちゃんは満足げだったが、夕食後、お兄ちゃんが入浴してるのを確認し、お父さんとフライドチキンを食べにこっそり家を出たエピソードがある。 まずかったわけじゃない。 初めてのビーガンのご飯美味しかった。 だけど、お父さんも私も、肉や魚、卵などどれかないと物足りなかったのだ。 「せれなちゃん、クラッカー食べる?ドライフィグとクリームチーズもあるよ。」 その組み合わせは最高に美味しいやつ。 「うん、食べる。」 「オーケー。」 お兄ちゃんがプレートと缶ビールを持って私の隣に座る。 プレートにはクラッカーとココット。 ココットの中身は刻んだドライフィグとクリームチーズを和えたもの。 お兄ちゃんのお気に入りのおつまみで、私のお気に入りのおやつだ。 お兄ちゃんは缶ビールをロックグラスにそそぎ、ぐいぐいと飲んだ。 相変わらずごくごくとのどごしの良い音だ。 「ふー。今日も俺お疲れ。ううん、今週の俺お疲れ!」 「うん、お兄ちゃんお疲れ様。」 「せれなちゃんもお疲れー」 「ねえ、このクラッカー、いつものじゃないメーカー?」 いつも白いクラッカーなのに、今日は茶色っぽい。 「ああ、今日買ってきたんだー!全粒粉のクラッカー。美味しそうっしょ?」 だから女子ですか。 外見パリピの男子大学生なのに、女子力高いな。 ある意味完璧。 あと、ちゃんと成績もいいらしい。お 父さんがこないだ成績を褒めていた。 「さささ、お食べ。」 クラッカーにクリームチーズを塗って私に渡してきたから食べた。 美味しかった。顔がにやける。美味しいじゃん、全粒粉のクラッカー。 「だろー?もっと食べてね。」 ポンポンと頭を撫でられる。 お兄ちゃんは私が考えてること、いつもわかるようなのだ。
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