みてるだけの朝。

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昼休みがはじまり、私は響谷先生の研究室に向かった。 響谷先生は昼休みを研究室で過ごすのは去年から知っていた。 さらに嬉しいことを言えば、研究室には昼休み響谷先生しかいないのもリサーチ済みだ。研究室の前に行き、深呼吸をする。 私、落ち着け。 焦らず、テンパらず、ゆっくり話そう。 そして扉をノックした。 「...はい。」 響谷先生の声が奥から聞こえた。 「先生、わたし、水無瀬です。」 「ああ、どうぞ。」 「失礼します。」 研究室にはいり、私と響谷先生の二人きりになる。 ドキドキしてきた。 いつものようだが、響谷先生を目の前にすると普通になれない。 それに前髪がないから、いつもより視界が良く、響谷先生がはっきりと映る。 響谷先生はソファに座って食事をしていた。 「どうした?」 「あの、先生、先週はありがとうございました。今日遅刻して、ちゃんとお礼言ってなかったので。」 私はペコっと頭を下げた。 「ちゃんと、言った通りしてきたんだな。」 それは多分コンタクトのことだと察した。 「はい、コンタクト、先生の言った通りにしてきました。コンタクトって入れるの難しいですね。」 「コンタクトもだけど、前髪。そっちの方が似合ってる。」 今突然と全身が沸騰してる気分になった。 「...似合って、るんですか?」 「ああ、似合ってるよ。もっと早めに前髪切って言えばよかったな。」 響谷先生と見つめ合う。 背中の汗がすごい。 濡れたシャツでブラジャーすけてないよね? 今日って何色のブラジャーつけたっけ? そうだ、新しく買った黒のレースだ! 「水無瀬、顔赤いぞ?」 「ふえっ!そそそ、そう、ですか!?最近暑くて!」 「冷房下げるか?」 「大丈夫です!」 落ち着け、私。 さっきまでちゃんと話せた。 まだ用件があるじゃないか。 「あの!せっ先生!!お父さんが今日16時ごろに電話で話したいって言ってました!その時間、先生大丈夫、でっですか!?」 まるで話しテンポぐだぐだでコミュニケーション能力が低い人みたいだった。 今更だけど。 「16時ね、出れるようにしとく。」 「えっと、金曜日、先生からの電話折り返ししたかったみたいだったんですけど、仕事の都合で、できなかったみたい。」 「お父さん、忙しいって言ってたな。わかった。」 「は、はい。じゃあ、失礼します。」 本当は一緒に昼食を取りたかったけど、ハードル高いし、響谷先生から見たら何故って思うよね。 そのまま研究室をあとにした。 昼休みが終わる10分、昼食を終え、教室に戻った。 フィナンシェ美味しかったな。 もっと味わって食べればよかった。 今度お兄ちゃんに頼んでみようかな。 「せれなちゃん!前髪こっちのほうが似合うよー!」 席に着くと、隣に赤坂くんがいた。 赤坂くんはいつも星崎くんと昼休みを過ごしている。 昼休みよく気さくに声をかけてくれてる派手めな人。 私に話しかける人ってなかなかいないから、ちょっとありがたい。
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