みてるだけの朝。

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今まで赤坂くんとは昼休み中しか話さなかったが、最近は話す機会が増えた。 というか、彼からよく話しかけてくれるようになった。 「せれなちゃんって、兄妹いるの?」 「うん、お兄ちゃんがいるよ。」 「妹ちゃんなんだ!お兄さん、いくつなの?」 「22歳だよ。大学3年。」 「俺は弟2人いて、14歳と12歳なんだよー。毎日うるさくて」 兄妹の写真を見せ合ったりした。 まあ、こんな普通の話ばかりしてる。 話せば話すほど、赤坂くんは裏表ない優しい人という印象が増す。 「せれなちゃーん、じゃあまた明日!葵、部活行くぞい。」 「うん、またね、バイバイ。」 放課後もこうやって、毎日のように挨拶するようになった。 放課後だけじゃない、朝も教室で赤坂くんから挨拶してくれる。 今日も挨拶し、昼休みも隣の席にいた。 この時間いるのは、珍しく彼一人だった。 昼休みもいつものように話す。 「ねえ、せれなちゃんってさ、好きな人いるの?」 「えええ!!!」 突然の振りに驚きを隠せなかった。 なんで急に? もしかして、知ってるの? 顔がぼぼぼっと熱くなる。 「いいい、いない!!って!!いないよ!!なんで!!??」 否定するほど、焦ってしまう。 恥ずかしくなる。 何この人。 どうにかして、誤魔化さないと。 「だってさ、急に可愛くイメチェンしたし、恋してるのかなーって。あと、顔に出すぎ!絶対好きな人いるだろ!」 嘘! 顔に出てるってどうゆうこと? 私が響谷先生を見つめてるのバレてる? 響谷先生を朝、図書室で観察してるのも知ってるの?もしかして、響谷先生と話すとき、わかりやすいくらい緊張してた? 考えれば考えるほど頭がぐちゃぐちゃになる。落ち着け私。 いつも肝心なときに落ち着かない。 そう、一回お茶を飲もう。 タンブラーの蓋を開け、一口飲む。 「ねえ、このクラスに好きな人いるの?」 ブーーーー!!!! お茶を吹き出した。 気管に入り、めちゃくちゃむせた。 ば、バレてる!!! どうして!! 赤坂くんはゲラゲラ笑う。 「げほっげほっ!」 苦しい。 男の人の前で口から吹き出して、みっともない。 恥ずかしい。 そして汚い。 もしかして赤坂くん、私がお茶を飲むタイミングを合わせたの? 急いで机をタオルで拭く。 「大丈夫?落ち着いた?」 「…・」 からかわられて少しイラつく。 返事はしなかった。 「葵のことが好きなの?」 「…え?」 以外にも違う人の名前が出てきた。 思わず、薄い反応をしてしまった。 赤坂くんは勘違いしてたみたい。 よかった。安心感が私を包む。 次第に心も話し方も落ち着き、いつも通りになってきた。 「え!まじ!?」 「赤坂くんの勘違いだよ。」 淡々と会話しながら、時計を見る。 あと3分くらいで数学が始まる。 胸が高まってきた。 「あ、葵。」 隣の席の星崎くんが教室に戻ってきた。 なんだか様子が不自然のようにぎこちない様子に見えた。 「あああ、赤坂、、、も、もうすぐ、5限目が始まるな!」 「あ!そうだったな!もうすぐ響谷先生きちまうな!じゃっ!せれなちゃん、さっきのは内緒にしとくね〜!」 赤坂くんもぎこちない素振りで自分の席に戻っていった。 授業の準備し終えた頃に、響谷先生が教室に入ってきた。 私は今日も、胸が踊るような気分で数学を受ける。
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